2009年 京都大学(理系乙)・前期 問題と解答
1. xyz空間でO(0,0,0),A(3,0,0),B(3,2,0),C(0,2,0),D(0,0,4),E(3,0,4), F(3,2,4),G(0,2,4)を頂点とする直方体OABC-DEFGを考える。辺AEをs:1−sに内分する 点をP,辺CGをt:1−tに内分する点をQとおく。ただし0<s<1,0<t<1とする。 Dを通り,O,P,Qを含む平面に垂直な直線が線分AC(両端を含む)と交わるようなs,tのみたす 条件を求めよ。 |
[解答]
Dを通り平面OPQに垂直な直線が,線分ACと交わる点をRとする。
AR:RC=u:1−u (0≦u≦1) とすると,
これで,お膳立がすべてそろった。
DR⊥(平面OPQ)だから,DR⊥OP,DR⊥OQ
9u−16s=0 ←(内積)=0をつくる。
4(1−u )−16t=0
整理をし,
9u=16s
u=1−4t
文字を消すときは,その範囲を反映させよう。
uを消去すると, 16s=9(1−4t )
すなわち, 16s+36 t=9
2. 平面上の鋭角三角形△ABCの内部(辺や頂点は含まない)に点Pをとり,A´をB,C,Pを 通る円の中心,B´をC,A,Pを通る円の中心,C´をA,B,Pを通る円の中心とする。 このときA,B,C,A´,B´,C´が同一円周上にあるための必要十分条件はPが△ABCの内心 に一致することであることを示せ。 |
[解答]
すごい図ですね。どうやって示すんだろ・・。
∠PBC=b,∠PCB=c とすると,円A´の円周角と中心角の関係から,
∠P A´B=2 c,∠P A´C=2b
△A´BC´≡△A´PC´だから,∠B A´C´=∠P A´C´=c ←とりあえず角度を設定しておく。
同様に,
△A´CB´≡△A´PB´だから,∠C A´B´=∠P A´B ´=b
△AC´B´≡△P C´B´だから,AP⊥C´B´ ・・・・・・@ ←これがあとできいてくる。
〔T〕 A,B,C,A´,B´,C´が同一円周S上にある ⇒ Pが△ABCの内心に一致する
を示す。
円Sの円周角の関係から,∠B A´C´=∠B AC´=c,∠C A´B´=∠C AB´=b
さらに,C´A=C´B, B´A=B´Cだから,
∠C´A B=∠C´B A=∠AB´C´=c ←円周角をフルに活用しよう。
∠B´A C=∠B´CA=∠A C´B´=b
C´B´とAB,ACとの交点をそれぞれQ,Rとすると,
∠A QR=∠ARQ=b+c ・・・・・・A
@,Aより,APは∠BACの二等分線である。 ←内心の定義となっている。
上の証明の向きを変えて示すことで同様にして,
BPは∠ABCの二等分線,CPは∠ACBの二等分線
であることがそれぞれ言える。
よって,点Pは△ABCの内心である。
〔U〕 Pが△ABCの内心に一致する ⇒ A,B,C,A´,B´,C´が同一円周上にある
を示す。←こちらはそんなに難しくない。
Pが△ABCの内心だから,∠ABP=∠PBC=b,∠ACP=∠BCP=c
△ABCの内角だから, ∠BAC=180°−(2 b+2 c)
四角形ABA´Cの内角において, ←向かい合う角の和を調べる。
∠BAC+∠BA´C=180°−(2 b+2 c)+(2 b+2 c)=180°
よって,四角形ABA´Cは円に内接する。この円は△ABCの外接円である。
上の証明の向きを変えて示すことで同様にして,
四角形AB CB´は円に内接する
四角形CAC´Bは円に内接する
ことがそれぞれ言える。これらの円はともに△ABCの外接円である。
よって,A,B,C,A´,B´,C´は同一円周上にある。
(証明終わり)
3. n枚のカードを積んだ山があり,各カードには上から順番に1からnまで番号がつけられて いる。ただしn≧2とする。このカードの山に対して次の試行を繰り返す。1回の試行では, 一番上のカードを取り,山の一番上にもどすか,あるいはいずれかのカードの下に入れるとい う操作を行う。これらn通りの操作はすべて同じ確率であるとする。n回の試行を終えたとき, 最初一番下にあったカード(番号n)が山の一番上にきている確率を求めよ。 |
[解答]
n回の試行によってできるカードの移動の総数はn n通りで,これらは同様に確からしい。そこで,
n回の試行後,番号nのカードが山の一番上に来るような移動の総数を求める。←これを求め,分数を作る。
n回の試行で番号nのカードが山の一番上に来るのは,
(n−1)回の試行で番号1〜n−1の(n−1)枚のカードを番号nのカードより下に持って行き,
あと1回の試行は番号nのカードよりも上に置く,または番号nのカード自体をそのまま上に置く
・・・・・・★
という場合である。
kを1≦k≦n−1の整数とする。
(ア) 番号kのカードだけを番号nのカードよりも上に置く場合
番号kのカードを番号nのカードよりも上に置く方法は,
(n−k)通り。 ←kのカードからnのカードまでに置く場所が(n−k)箇所あるので。
(n−1)枚のカードを番号nのカードより下に持って行く移動の総数は,
(n−1)!通り ←1回目のkのカードの移動を無視して,上から順に繰り出す方法が,1×2×3×・・・×(n−1)通り。
だから,(ア)の場合の数は,(n−k)×(n−1)!通り
kに1からn−1まで代入して加えると,
{1+2+3+・・・+(n−1)}×(n−1)!
(イ) 番号nのカード自体をそのまま上に置く場合
番号1〜n−1の(n−1)枚のカードを番号nのカードより下に持って行く移動の総数を求めて,
(n−1)!通り ←ここまで来ればあとは式を作るだけ。
(ア),(イ)より,★の総数は,
求める確率は,
4. 自然数nに対して平面上の点Pn(xn ,yn)を により定める。 示せ。ここでOは原点である。 |
[解答]
ここでad−bc=1と@を用いて, ←式を簡単なものに変形していく。
(a2+ad−1)2+c2(a+d)2=1 ←( )の中の式を書き換える。 { a(a+d)−1}2−1+c2(a+d)2=0 a2(a+d)2−2a(a+d)+c2(a+d)2=0 (a2+c2)(a+d)2−2a(a+d)=0 (a+d){(a+d)−2a }=0 (a+d )(d−a)=0 ←簡単な式になった。 |
よって, a=d または a=−d ←この2つの場合を調べていく。
(@) a=d のとき
ad−bc=1⇔a2−bc=1⇔1−a2+bc=0⇔c2+bc=0⇔c(b+c)=0 ←書き換えていく。
⇔c=0またはb+c=0
(ア)c=0のとき
(x1 ,y1)=(a ,0),(x2 ,y2)=(a2,0)となる。 ←yがどれも0になりそうだ。
(xn ,yn)=(an,0)と仮定すれば,
となるので,すべてのnで(xn ,yn)=(an,0)といえる。←帰納法。
@よりa2=1だから,xn2+yn2=(an)2=(a2)n=1 ←これで示せた。
(イ)b+c=0のとき
xn2+yn2=(a xn−1+b yn−1)2+(c xn−1+a yn−1)2 ←漸化式を作る。
=(a2+c2)xn−12+2
a(b+c)xn−1 yn−1+(a2+b2)yn−12
=xn−12+{a2+(−c)2 } yn−12
=xn−12+yn−12
=xn−22+yn−22=・・・=x12+y12=a2+c2=1 ←項を下げていく。
(ア),(イ)のどちらの場合も,すべてのnに対して,
(A) a=−d のとき
ad−bc=1⇔a2+bc=−1だから,
↑ハミルトンを使っても可。A2−(a+d) A+(ad−bc) E=O⇔A2=−Eとなる。
だから, xn+22+yn+22=xn2+yn2
・ nが奇数のとき, xn2+yn2=xn−22+yn−22=・・・=x12+y12=1 ←項を下げていく。
・ nが偶数のとき, xn2+yn2=xn−22+yn−22=・・・=x22+y22=1
よって,すべてのnに対して,
(@),(A)より,すべてのnに対しての長さは1である。 (証明終わり)
5. xy平面上で原点を極,x軸の正の部分を始線とする極座標に関して,極方程式 r=2+cosθ (0≦θ≦π)により表される曲線をCとする。Cとx軸とで囲まれた図形をx軸 のまわりに1回転して得られる立体の体積を求めよ。 |
[解答]
極方程式r=2+cosθを直交座標の媒介変数表示に直すと,
x=r cosθ=cosθ(2+cosθ)
y=r sinθ=sinθ(2+cosθ) ←あとは公式通りに。
y=0のとき,θ=0,π (x,y)=(3,0),(−1,0) ←x軸との交点。
体積Vは,
x : −1 → 3
θ : π → 0 ←積分区間
だから,
cosθ=tとおくと,θ: π → 0 のとき, t : −1 → 1 だから,←置換する。
6. aとbを互いに素,すなわち1以外の公約数を持たない正の整数とし,さらにaは奇数と する。正の整数nに対して整数a n,b nを をみたすように定めるとき,次の(1),(2)を示せ。 ただし (1) a2は奇数であり,a2とb2は互いに素である。 (2) すべてのnに対して,a nは奇数であり,a nとb nは互いに素である。 |
[解答]
(1) n=1,2のとき,
文字はそれぞれ整数でが無理数だから,
a1=a,b1=b
a2=a2+2b2,b2=2a b ←これをよく見て証明する。
aは奇数だからa2も奇数で,また2b2は偶数だから,a2+2b2は奇数である。←奇+偶=奇数
よって,a2は奇数である。
次に,a2とb2が共通な素因数dをもつとする。←背理法で示す。
a2が奇数だから,dは3以上の奇数である。
dはb2の約数,つまりabの約数で素数だから,aまたはbの約数である。
(ア)dがaの約数であるとき ←面倒だが場合分けする。
2b2=a2−a2の右辺がdの倍数になり,これよりbもdの倍数になる。
(イ)dがbの約数であるとき
a2=a2−2b2の右辺がdの倍数になり,これよりaもdの倍数になる。
(ア)も(イ)もa,bがともにdの倍数となるので不合理。
よって,a2とb2は互いに素である。 (証明終わり)
(2) すべてのnに対して,a nは奇数であり,a nとb nは互いに素である。・・・・・・★
を,数学的帰納法で証明する。
〔1〕n=1のとき
明らかに★は成り立つ。
〔2〕n=kのとき★が成り立つと仮定する。
だから, ak+1=a・ak+2b・bk ・・・・・・@
bk+1=b・ak+a・bk ・・・・・・A
仮定より,a・akは奇数,また2b・bkは偶数だから,a・ak+2b・bk は奇数である。
よって,ak+1は奇数である。
次に,ak+1とbk+1が共通な素因数dをもつとして矛盾を導く。←また背理法を使う。
ak+1が奇数だから,dは3以上の奇数である。
@×a−A×2bより,←bkを消す。
a・ak+1−2b・bk+1=(a2−2b2)ak
@×b−A×a より,←akを消す。
b・ak+1−a・bk+1=(2b2−a2)bk
いずれの左辺もdの倍数だから,右辺もdの倍数である。a2−2b2がdの倍数でないとすると,
ak,bkがともにdの倍数となり互いに素でなくなるので,a2−2b2はdの倍数である。
ここでbがdの倍数なら,a2=(a2−2b2)+2b2の右辺はdの倍数となり,結果aもdの倍数となる。
aとbは互いに素だからこれは不合理。よってbはdの倍数ではない。← この条件はあとで使う。
@を変形して,
ak+1=a(a・ak−1+2b・bk−1)+2b・bk ←bk がdの倍数になることを導く。
=(a2−2b2)a k−1+2b2 ak−1+2ab・bk−1+2b・bk
=(a2−2b2)ak−1+2b(b・ak−1+a・bk−1)+2b・bk
=(a2−2b2)ak−1+4b・bk
だから,4b・bk=ak+1−(a2−2b2)ak−1
よって,4b・bkはdの倍数であり,4bはdの倍数ではないので,bkがdの倍数となる。
あともう少しです。
このときAより,b・ak=bk+1−a・bkで,右辺はdの倍数となり,結果akもdの倍数となる。
よってak,bkがともにdの倍数となり,互いに素であることに矛盾する。
以上より,ak+1とbk+1は共通な素因数をもたない。
すなわち,ak+1とbk+1は互いに素であるので,★はn=k+1のときも成り立つ。
よって,すべてのnに対して★は成り立つ。 (証明終わり) 終わった・・