2009年 京都大学(理系乙)・前期 問題と解答

 

 

 1. xyz空間でO000),A300),B320),C020),D004),E304),

   F324),G024)を頂点とする直方体OABC-DEFGを考える。辺AEs1sに内分する

  点をP,辺CGt1tに内分する点をQとおく。ただし0s10t1とする。

  Dを通り,OPQを含む平面に垂直な直線が線分AC(両端を含む)と交わるようなstのみたす

  条件を求めよ。

 

 

[解答] 

 

   

   

Dを通り平面OPQに垂直な直線が,線分ACと交わる点をRとする。

ARRCu1u 0u1) とすると,

   

   

これで,お膳立がすべてそろった。

DR⊥(平面OPQ)だから,DROPDROQ

      9u16s0  ←(内積)=0をつくる。

       4(1u )16t0

整理をし,

      9u16s

       u14t

文字を消すときは,その範囲を反映させよう。

uを消去すると, 16s9(14t )

すなわち,    16s36 t9

 

 

 

 

 2. 平面上の鋭角三角形△ABCの内部(辺や頂点は含まない)に点Pをとり,A´をBCP

   通る円の中心,B´をCAPを通る円の中心,C´をABPを通る円の中心とする。

   このときABCA´,B´,C´が同一円周上にあるための必要十分条件はPが△ABCの内心

   に一致することであることを示せ。

      

 

[解答] 

すごい図ですね。どうやって示すんだろ・・。

PBCb,∠PCBc とすると,円A´の円周角と中心角の関係から,

  ∠P A´B2 c,∠P A´C2b

A´BC´≡△A´PC´だから,∠B A´C´=∠P A´C´=c ←とりあえず角度を設定しておく。

同様に,

A´CB´≡△A´PB´だから,∠C A´B´=∠P A´B ´=b

AC´B´≡△P C´B´だから,APC´B´ ・・・・・・@ ←これがあとできいてくる。

 

〔T〕 ABCA´,B´,C´が同一円周S上にある ⇒ Pが△ABCの内心に一致する

 を示す。

 円Sの円周角の関係から,∠B A´C´=∠B AC´=c,∠C A´B´=∠C AB´=b

 さらに,C´AC´B B´AB´Cだから,

    ∠C´A B=∠C´B A=∠AB´C´=c ←円周角をフルに活用しよう。

    B´A C=∠B´CA=∠A C´B´=b 

 C´B´とABACとの交点をそれぞれQRとすると,

    ∠A QR=∠ARQbc ・・・・・・A

 @,Aより,APは∠BACの二等分線である。 ←内心の定義となっている。

 

 上の証明の向きを変えて示すことで同様にして,

   BPは∠ABCの二等分線,CPは∠ACBの二等分線

 であることがそれぞれ言える。

 

 よって,点Pは△ABCの内心である。

 

〔U〕 Pが△ABCの内心に一致する ⇒ ABCA´,B´,C´が同一円周上にある  

 を示す。←こちらはそんなに難しくない。

 Pが△ABCの内心だから,∠ABP=∠PBCb,∠ACP=∠BCPc

 △ABCの内角だから, ∠BAC180°−(2 b2 c

 四角形ABA´Cの内角において, ←向かい合う角の和を調べる。

    ∠BAC+∠BA´C180°−(2 b2 c)+(2 b2 c)=180°

 よって,四角形ABA´Cは円に内接する。この円は△ABCの外接円である。

 

 上の証明の向きを変えて示すことで同様にして,

   四角形AB CB´は円に内接する

   四角形CAC´Bは円に内接する

 ことがそれぞれ言える。これらの円はともに△ABCの外接円である。

 

 よって,ABCA´,B´,C´は同一円周上にある

                                                (証明終わり)

 

 

 

 

 3. n枚のカードを積んだ山があり,各カードには上から順番に1からnまで番号がつけられて

   いる。ただしn2とする。このカードの山に対して次の試行を繰り返す。1回の試行では,

   一番上のカードを取り,山の一番上にもどすか,あるいはいずれかのカードの下に入れるとい

   う操作を行う。これらn通りの操作はすべて同じ確率であるとする。n回の試行を終えたとき,

   最初一番下にあったカード(番号n)が山の一番上にきている確率を求めよ。

 

 

[解答] 

n回の試行によってできるカードの移動の総数はn n通りで,これらは同様に確からしい。そこで,

n回の試行後,番号nのカードが山の一番上に来るような移動の総数を求める。←これを求め,分数を作る。

n回の試行で番号nのカードが山の一番上に来るのは,

n1)回の試行で番号1〜n1の(n1)枚のカードを番号nのカードより下に持って行き,

あと1回の試行は番号nのカードよりも上に置く,または番号nのカード自体をそのまま上に置く

・・・・・・★

という場合である。

 

kを1≦kn1の整数とする。

(ア) 番号kのカードだけを番号nのカードよりも上に置く場合

 番号kのカードを番号nのカードよりも上に置く方法は,

      (nk)通り。 kのカードからnのカードまでに置く場所が(nk)箇所あるので。

 (n1)枚のカードを番号nのカードより下に持って行く移動の総数は,

      (n1)!通り ←1回目のkのカードの移動を無視して,上から順に繰り出す方法が,1×2×3×・・・×(n1)通り。

 だから,(ア)の場合の数は,(nk)×n1)!通り

 kに1からn1まで代入して加えると,

      {123+・・・+(n1)}×n1)!

     

(イ) 番号nのカード自体をそのまま上に置く場合

 番号1〜n1の(n1)枚のカードを番号nのカードより下に持って行く移動の総数を求めて,

      (n1)!通り ←ここまで来ればあとは式を作るだけ。

 

(ア),(イ)より,★の総数は,

    

求める確率は,

   

 

 

 

 

 4. adbc1をみたす行列とする(abcdは実数)。

   自然数nに対して平面上の点Pnxn yn)を

        

  により定める。の長さが1のとき,すべてのnに対しての長さが1であることを

  示せ。ここでOは原点である。

 

 

[解答] 

ここでadbc1と@を用いて, ←式を簡単なものに変形していく。

a2ad12c2ad21 ←( )の中の式を書き換える。

{ aad)−1}21c2ad20

a2ad22aad)+c2ad20

a2c2)(ad22aad)=0

ad{ad)−2a }0

ad )(da)=0  ←簡単な式になった。

よって,  ad  または a=−d ←この2つの場合を調べていく。

 

(@) ad のとき

 adbc1a2bc11a2bc0c2bc0cbc)=0 ←書き換えていく。

       ⇔c0またはbc0

 (ア)c0のとき

   x1 y1)=(a 0),(x2 y2)=(a20)となる。 yがどれも0になりそうだ。

   (xn yn)=(an0)と仮定すれば,

      

   となるので,すべてのnで(xn yn)=(an0)といえる。←帰納法。

   @よりa21だから,xn2yn2=(an2=(a2n1 ←これで示せた。

   

 (イ)bc0のとき

           

     xn2yn2=(a xn1b yn12+(c xn1a yn12 ←漸化式を作る。

                         =(a2c2xn122 abcxn1 yn1+(a2b2yn12

                         xn12+{a2+(−c2 } yn12

         xn12yn12 

         =xn22yn22=・・・=x12y12a2c21 ←項を下げていく。

  (ア),(イ)のどちらの場合も,すべてのnに対して,

        

 

(A) a=−d のとき

  adbc1a2bc=−1だから,

     

       ↑ハミルトンを使っても可。A2(ad) A+(adbc) EOA2=−Eとなる。

    

  だから, xn22yn22xn2yn2 

  ・ nが奇数のとき, xn2yn2xn22yn22=・・・=x12y121 ←項を下げていく。

  ・ nが偶数のとき, xn2yn2xn22yn22=・・・=x22y221 

  よって,すべてのnに対して,

        

 

(@),(A)より,すべてのnに対しての長さは1である。          (証明終わり)

 

 

 

 

 5. xy平面上で原点を極,x軸の正の部分を始線とする極座標に関して,極方程式

   r2cosθ (0≦θ≦π)により表される曲線をCとする。Cx軸とで囲まれた図形をx

   のまわりに1回転して得られる立体の体積を求めよ。

 

 

[解答] 

極方程式r2cosθを直交座標の媒介変数表示に直すと,

   xr cosθ=cosθ(2cosθ)

    yr sinθ=sinθ(2cosθ)  ←あとは公式通りに。

y0のとき,θ=0,π (xy)=(30),(−10x軸との交点。

 

 

体積Vは,

 

   x : −1 → 3 

  θ : π  → 0  ←積分区間

だから,

  

   

cosθ=tとおくと,θ: π → 0 のとき, t : −1 → 1 だから,←置換する。

   

    

    

    

 

 

 

 

 6.  abを互いに素,すなわち1以外の公約数を持たない正の整数とし,さらにaは奇数と

   する。正の整数nに対して整数a nb n

         

   をみたすように定めるとき,次の(1),(2)を示せ。

   ただしが無理数であることは証明なしに用いてよい。

   (1) a2は奇数であり,a2b2は互いに素である。

   (2) すべてのnに対して,a nは奇数であり,a nb nは互いに素である。

 

 

[解答] 

(1) n12のとき,

   

   

 文字はそれぞれ整数でが無理数だから,

      a1ab1b

       a2a22b2b22a b ←これをよく見て証明する。

  aは奇数だからa2も奇数で,また2b2は偶数だから,a22b2は奇数である。←奇+偶=奇数

 よって,a2は奇数である。

 

 次に,a2b2が共通な素因数dをもつとする。←背理法で示す。

 a2が奇数だから,d3以上の奇数である。

 db2の約数,つまりabの約数で素数だから,aまたはbの約数である。

 (ア)daの約数であるとき ←面倒だが場合分けする。

    2b2a2a2の右辺がdの倍数になり,これよりbdの倍数になる。

 (イ)dbの約数であるとき

    a2a22b2の右辺がdの倍数になり,これよりadの倍数になる。

 

 (ア)も(イ)もabがともにdの倍数となるので不合理。

 よって,a2b2は互いに素である。        (証明終わり)

 

(2) すべてのnに対して,a nは奇数であり,a nb nは互いに素である。・・・・・・★

  を,数学的帰納法で証明する。

 

 〔1〕n1のとき

   明らかに★は成り立つ。

 〔2〕nkのとき★が成り立つと仮定する。

   

           

           

  だから,    ak+1aak2bbk  ・・・・・・@

              bk+1bakabk   ・・・・・・A

  仮定より,aakは奇数,また2bbkは偶数だから,aak2bbk は奇数である。

  よって,ak+1は奇数である。

  

  次に,ak+1bk+1が共通な素因数dをもつとして矛盾を導く。←また背理法を使う。

  ak+1が奇数だから,d3以上の奇数である。

  @×a−A×2bより,bkを消す。  

           aak+12bbk+1(a22b2ak

  @×b−A×a より,akを消す。  

           bak+1abk+1(2b2a2bk

   いずれの左辺もdの倍数だから,右辺もdの倍数である。a22b2dの倍数でないとすると,

  akbkがともにdの倍数となり互いに素でなくなるので,a22b2dの倍数である。

  

  ここでbdの倍数なら,a2=(a22b2)+2b2の右辺はdの倍数となり,結果adの倍数となる。

  abは互いに素だからこれは不合理。よってbdの倍数ではない。 この条件はあとで使う。

 

  @を変形して,

       ak+1aaak12bbk1)+2bbk bk dの倍数になることを導く。

         =(a22b2a k12b2 ak12abbk12bbk

         =(a22b2ak12bbak1abk1)+2bbk

         =(a22b2ak14bbk

   だから,4bbkak+1−(a22b2ak1

  よって,4bbkdの倍数であり,4bdの倍数ではないので,bkdの倍数となる。

   あともう少しです。

  このときAより,bakbk+1abkで,右辺はdの倍数となり,結果akdの倍数となる。  

  よってakbkがともにdの倍数となり,互いに素であることに矛盾する。

 

  以上より,ak+1bk+1は共通な素因数をもたない。

  すなわち,ak+1bk+1は互いに素であるので,★はnk+1のときも成り立つ。

 

 よって,すべてのnに対して★は成り立つ。    (証明終わり)  終わった・・