2009年 東京大学(文科)・前期 問題と解答
1. 座標平面において原点を中心とする半径2の円をC1とし,点(1,0)を中心とする半径1の 円をC2とする。また,点(a,b)を中心とする半径tの円C3が,C1に内接し,かつC2に外接する と仮定する。ただし,bは正の実数とする。 (1) a,bをtを用いて表せ。また,tがとり得る値の範囲を求めよ。 (2) tが(1)で求めた範囲を動くとき,bの最大値を求めよ。 |
[解答]
(1)
円C3がC1に内接するので,←中心間の距離は半径の差に等しい
a2+b2=( t−2)2 ・・・・・・(ア)
また,円C3がC2に外接するので,←中心間の距離は半径の和に等しい
( a −1 )2+b2=(t+1)2 ・・・・・・(イ)
(ア)−(イ)より,←あとは連立方程式を解くだけ。
a2−(a −1)2=(t−2)2−(t+1)2
2 a −1=−6 t+3
a =−3 t+2
(ア)より, b2=(t−2)2−a2
=( t−2)2−(−3 t+2)2
=−8 t 2+8 t
bが存在する条件は,−8 t 2+8 t>0 すなわち,0<t<1
このとき,円C3は確かに存在する。
(2) 0<t<1のとき, t>0,1−t>0だから,←(相乗平均)≦(相加平均)を使う。
2. 自然数m≧2に対し,m−1個の二項係数 mC1 , mC2 ,
・・・ , mCm−1 を考え,これらすべての最大公約数をdmとする。すなわち,dmはこれらすべてを割り切る最大 の自然数である。 (1) mが素数ならば,dm=mであることを示せ。 (2) すべての自然数kに対し,km−kがdmで割り切れることを,kに関する数学的帰納法に よって示せ。 |
[解答]
(1) まず, dmはmC1の約数だから,dm≦m ・・・@ ←dmがm以下となることがわかる。
次に r=1,2,・・・,m−1とする。←二項係数をまとめて考える準備。
これはm個のものからr個とった組合せの数を表すので整数である。
したがって分子は分母の倍数であるが,mは素数だから分母のどの因数とも互いに素である。
すなわち,mCrはmの倍数であり,これにより,dmもmの倍数となる。 ・・・A
@,Aより,dm=m (証明終わり)
(2) 「すべての自然数kに対し,km−kがdmで割り切れる」・・・★
これを数学的帰納法で証明する。
(@) k=1のとき
km−k=0だから,これは自然数dmで割り切れる。よって,★は成り立つ。
(A) k=p (pはある自然数)のとき,★が成り立つと仮定する。
(p+1)m−(p+1)= mC0+p・mC1+p2・mC2+・・・+pm−1・mCm−1+pm・mCm−(p+1) ←二項定理で展開。
=p・mC1+p2・mC2+・・・+pm−1・mCm−1+( pm−p )
ここで,mC1,mC2,・・・,mCm−1はすべてdmで割り切れ,pm−pは帰納法の仮定からdmで割り切れる
ので,(p+1)m−(p+1)はdmで割り切れる。
よって,k=p+1のときも★が成り立つ。
(@),(A)より,★は成り立つ。 (証明終わり)
3. スイッチを1回押すごとに,赤,青,黄,白のいずれかの色の玉が1個,等確率1/4で 出てくる機械がある。2つの箱LとRを用意する。次の3種類の操作を考える。 (A) 1回スイッチを押し,出てきた玉をLに入れる。 (B) 1回スイッチを押し,出てきた玉をRに入れる。 (C) 1回スイッチを押し,出てきた玉と同じ色の玉が,Lになければその玉をLに入れ, Lにあればその玉をRに入れる。 (1) LとRは空であるとする。操作(A)を5回おこない,さらに操作(B)を5回おこなう。このとき LにもRにも4色すべての玉が入っている確率P1を求めよ。 (2) LとRは空であるとする。操作(C)を5回おこなう。このとき,Lに4色すべての玉が入って いる確率P2を求めよ。 (3) LとRは空であるとする。操作(C)を10回おこなう。このときLにもRにも4色すべての玉が |
[解答]
(1) Lに4色すべての玉が入っているのは,5回の色の出方が
赤,青,赤,黄,白
のように1色が2回,他の色が1回ずつ出る場合である。このような色の出方は,
5C2×4!通り ←(2回出る色の場所)×(色の順番)
よって,Lに4色すべての玉が入っている確率は,
Rに4色すべての玉が入っている確率も同じである。
(2)
操作(C)を5回おこなったとき,Lに4色すべての玉が入っているのは,
操作(A)を5回おこなったとき,Lに4色すべての玉が入ることと同じである。←(1)で求めた。
(3) 操作(C)を10回おこなったとき,LにもRにも4色すべての玉が入っているのは,
(@)1つの色が4回,他の色が2回ずつ出る
(A)2つの色が3回,他の色が2回ずつ出る
このいずれかである。←それぞれの確率を求めて足せばいい。
(@)の場合の色の出方は,←(4回出る色の選択)×(パターン)
だから,確率は,
(A)の場合の色の出方は,←(3回出る色の選択)×(パターン)
だから,確率は,
よって,
4. 2次以下の整式f (x)=ax 2+bx+cに対し, を考える。 (1) f ( 0 )=0,f ( 2 )=2のときのSをaの関数として表せ。 (2) f ( 0 )=0,f ( 2 )=2をみたしながらfが変化するとき,Sの最小値を求めよ。 |
[解答]
(1) f ( 0 )=0より,c=0
f ( 2 )=2より,4a+2b=2 b=1−2 a
よって, f ´( x )=2ax+(1−2 a )
a=0のとき,f ´( x )=1だから,
以下,a≠0のときを考える。
f ´( x )=0となる値をtとすると,2at−(2 a−1)=0 ←記述しやすいように置き換えておく
また, f ´( 0 )=1−2 a, f ´( 2 )=2 a+1 ←積分を面積で求めるので,この値が必要。
(@) t<0,2<tのとき ←折れ線の境が区間の外にある場合
=(1−2 a)+(2 a+1)=2 ←定数になりました。
(A) 0≦t≦2のとき ←折れ線の境が区間の中にある場合
←絶対値を1つにまとめると,きれいな式になる。
←2乗は,絶対値がはずせる。
←(相加平均)≧(相乗平均)