2009年 日本ジュニア数学オリンピック予選 問題と解答
2009年1月12日 試験時間3時間
1. 下図において,三角形OAB,OBC,OCDはそれぞれ∠OAB,∠OBC,∠OCDを直角とする 直角二等辺三角形である。三角形OCDの面積が12のとき,三角形OABの面積を求めよ。 |
[考え方]
直角二等辺三角形を,分割します。
[解答]
この図から,△OCDは△OABを4個並べたものだとわかる。
△OAB=12÷4=3
(答) 3
2. 一辺1の正方形15個からなる3行5列のマス目がある。最も左下にある頂点を点A, 最も右上にある頂点を点Bとする。また,各正方形には下図のように左下の頂点から右上 の頂点への対角線が引かれている。これらの対角線と正方形の辺を通るAからBへの行き 方のうち,距離が最短であるものは何通りあるか。 |
[考え方]
まずは,最短距離となる線分の種類を考えます。なるべく対角線を多く通った方が距離が短くなるので,
対角線3本,横棒2本を通る場合が最短距離となります。
[解答]
最短距離となるのは,下図の赤い線分のうちの5本を通る場合である。
横棒1本進むことを「ヨ」,対角線1本進むことを「タ」としてその順序を考えると,
ヨヨタタタ
ヨタヨタタ
ヨタタヨタ
ヨタタタヨ
タヨヨタタ
タヨタヨタ
タヨタタヨ
タタヨヨタ
タタヨタヨ
タタタヨヨ
の10通り。←5個のものから2個取った組合せと同じで,5C2=10通りとしてもOK。
(答) 10通り
3. 次の数を小数で表したときの整数部分(小数点以下第1位を切り捨てた数)を求めよ。 |
[考え方]
大ざっぱに見積もると,分母=13,000,000=13×106,分子=109,000,000=109×106 くらいで,
整数部分は8になりそうだと見当がつきます。
[解答]
分母=S,分子=T とする。
分子のそれぞれの数について,その大きさを調べると,
1×8<9≦1×9 ←分子の1つの数を両サイドではさむ
12×8<98<12×9
123×8<987<123×9
1234×8<9876<1234×9
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12345678×8<98765432<12345678×9
これらを加えて,
S×8<T<S×9
各辺をSでわると,
よって,整数部分は8となる。
(答) 8
4. 3桁の正の整数が2つあり,どちらも一の位と十の位がともに9である。このような2つの数 の積の千の位としてありうる値をすべて求めよ。 |
[考え方]
百の位の数を文字でおいて,式をつくって展開します。
[解答]
百の位の数をa,bとすると,2数の積は,
(100 a+99) (100 b+99)=10000 ab+9900 (a+b)+9801
=10000 ab+10000(a+b)−100(a+b) +9801 ←変形する
=100{98−(a+b)}+1+10000 ab+10000(a+b) ←1は無視できる
千の位に影響するのは赤い部分だけであり,求めるものは98−(a+b) の十の位である。
2≦a+b≦18だから,
80≦98−(a+b)≦96
98−(a+b)の十の位は8か9である。
(答) 8,9
5. すべての辺の長さが1の凸五角形があり,ある2本の対角線のなす角が90°である。 このような五角形の面積としてありうる最大の値を求めよ。 ただし,すべての内角が180°未満である五角形のことを凸五角形という。 |
[考え方]
すべての辺が1で2本の対角線が直交するような五角形をかいてみます。
[解答]
すべての辺が1で2本の対角線が直交するような凸五角形は,次のようになる。
この図で,
△ABO≡△AEO(直角三角形の斜辺と他の1辺が等しい)
だから,BO=EO
よって,△BCO≡△ECO(2辺とその間の角が等しい)
だから,BC=EC=1となり,四角形ABCEはひし形である。←このひし形の面積を最大にすればいい。
ひし形ABCEの面積は,BC×(AからBCに引いた垂線の長さh)であり,これが最大になるのは
h=1のときだから,ひし形ABCEの面積の最大の値は,
1×1=1 ←正方形のとき。このとき五角形ABCDEは凸五角形となる)
一方,正三角形CDEの面積は,
よって,五角形の面積の最大の値は,
6. 14n,16n,18n,20nの正の約数の個数がすべて等しくなるような最小の正の整数nを 求めよ。 |
[考え方]
約数の個数の求め方には,次の公式があります。(高校レベル)
2a×3 b×5cの約数の個数は,(a+1) (b+1)
(c+1)
指数より1つ多い数を掛け合わせたものが約数の個数となります。
[解答]
14n=2×7×n
16n=24×n
18n=2×32×n
20n=22×5×n
ここで,n=2a×3
b×5c×7
dとおく。←最小の正の整数を求めるので,これ以外の因数は無視してOK。
14n =
2a+1×3
b×5c×7d+1 ……@
16n = 2a+4×3
b ×5c×7d ……A
18n = 2a+1×3
b+2×5c×7d ……B
20n = 2a+2×3
b ×5c+1×7d ……C
@とAの約数の個数が等しいので,
(a+2)
(d+2)=(a+5)
(d+1) ←3 b×5cが共通なので無視できる
a=3 d+1 ……(ア)
AとBの約数の個数が等しいので,
(a+5)
(b+1)=(a+2)
(b+3)
3b=2
a+1
=2(3 d+1)+1 ←(ア)を代入
b=2 d+1
……(イ)
AとCの約数の個数が等しいので,
(a+5)
(c+1)=(a+3)
( c+2)
2c=a+1
2c=3
d+2 ……(ウ) ←(ア)を代入
(ア)〜(ウ)を満たす最小のnは,d=0のときで,
a=1,b=1,c=1 このとき,n=2×3×5=30
(答) 30
7. 一辺の長さが1の小立方体が8つある。これらを重ねて,下図のように一辺の長さが2の 立方体を作った。このとき,もとの小立方体の頂点と一致する点を2点以上通るような直線 は空間内に何本あるか。 |
[考え方]
全部で27個の頂点があり,この中の2点を通る直線が何本あるのかを求めればいいのですが,2点
でなく3点通る直線もあります。重複する直線をあとで引く,という方法で求めます。
[解答] H22 1.12訂正。ご指摘ありがとうございます。
27個の頂点のうちの2点を通る直線の本数は,重複もふくめて,
27×26÷2=351(本)
この中には,2点だけを通る直線と3点を通る直線があり,3点を通る直線は3回重複して数えられて
いる。←A,B,Cが一直線上にある場合,直線AB,直線BC,直線ACの3つがカウントされている。
次に,3点を通る直線の本数を求める。
立方体の1つの面上にある3点を通る直線の本数は,
だから,合計8本。
立方体の6つの面のうち互いに垂直な3つの面をア,イ,ウとし,このそれぞれに平行な直線の本数
(面上の直線も含む)を数える。
アに平行な3点を通る直線は,8×3=24(本)
アに平行でなくイに平行な3点を通る直線は,5×3=15(本) ←上の24本で数えたものはのぞく。
アにもイにも平行でなくウに平行な3点を通る直線は,2×3=6(本) ←上の24本,15本で数えたものはのぞく。
よって,これらの合計は,24+15+6=45(本)
一辺が2の立方体の対角線4本も,3点を通る直線だから,これをふくめて,合計49本。
よって,求める直線の本数は,
351−49×2=351−98=253(本) ←全体から,重複した3つのうちの2つ分を引く。
(答) 253本
8. 1以上100以下の奇数をすべて掛けあわせた数の下3桁を求めよ。 |
[考え方]
1から99までの奇数は50個あります。これを全部掛けて計算するわけにはいきません。
下3桁とは,掛けあわせた積を1000でわったときの余りなので,1000=8×125と考えて8でわった余り
を調べます。
[解答]
1以上100以下の奇数50個の積をTとする。
Tの下3桁の数は,Tを1000でわったときの余りである。
ここで,1000=8×125であり,Tは125でわり切れる。
T=(5と25を除く1から99までの奇数の積)×5×25
と考え,( )内の値を8でわった余りを考える。
いま,
1×3×7=21を8でわった余り=5
また,
9×11×13×15=(8+1)(8+3)(8+5)(8+7)=8×(整数)+1×3×5×7
と表されるので,
9×11×13×15を8でわった余り=1×3×5×7を8でわった余り=1 ←4つをセットにするのがポイントです。
同様に,
17×19×21×23を8でわった余り=1×3×5×7を8でわった余り=1
27×29×31を8でわった余り=3×5×7を8でわった余り=1 ←25は除くが,同じ余りになる。
33×35×37×39を8でわった余り=1×3×5×7を8でわった余り=1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ←以下同じ。
89×91×93×95を8でわった余り=1×3×5×7を8でわった余り=1 ←ここまで,全部1になる。
97×99を8でわった余り=1×3を8でわった余り=3
以上より,(5と25を除く1から99までの奇数の積)を8でわった余りは,上記の余りをすべてかけ
あわせて, 5×1×1×・・・×1×3=15
これを8でわった余りに等しいので,7となる。
よって,
(5と25を除く1から99までの奇数の積)=8 M+7
と書けて,
T=(8 M+7)×5×25=1000 M+875
Tを1000でわったときの余りは875だから,Tの下3桁の数は,875
(答) 875
9. 三角錐O-ABCと底面ABC上の点Xは,OA=2,OB=3,OC=4,∠AOB=∠BOC= ∠COA,∠AOX=∠BOX=∠COX=30°をみたしている。このとき三角錐O-ABCの体積を 求めよ。ただし,PQで線分PQの長さを表すものとする。 |
[考え方]
ABCを底面として立体をかくのはわかりにくい。OXと,OA,OB,OCのなす角が30°なので,まずは
OA,OBをのばして正三角錐をつくります。
[解答]
OA,OBを延長してOA1=OB1=4となる点A1,B1をとる。
△OA1B1≡△OB1C≡△OCA1 ←2辺とその間の角が等しい。
だから,A1B1=B1C=CA1
よって,△A1B1Cは正三角形であり,三角錐OA1B1
Cは正三角錐である。
OXと△A1B1Cの交点をX1とすると,∠A1O X1=∠B1O X1=∠CO X1=30°だから,
△OA1X1≡△OB1
X1≡△OC X1 ←2辺とその間の角が等しい。
よって, A1X1=B1X1=CX1
X1は△A1B1Cの重心となるので,OX1⊥△A1B1C
△OA1X1で, A1X1=2
△A1B1Cは図のようになる。
正三角錐OA1B1 Cの体積は,
次に,三角錐OABCと三角錐OA1B1
Cの体積の比を考える。
まず,△OAB:△OA1B1=(2×3):(4×4)=3:8
←はさむ角が同じなので,2辺の積が面積の比となる。
これらを底面と見ると,高さが等しいので,体積の比も3:8となる。
よって,三角錐O-ABCの体積は,
10. 実数 a, b, c,
d,
e,
f が (
a+1999 )( b−1999 )( c+1999 )+( d−1999 )( e+1999 )( f −1999 )=1 ( a+2000 )( b−2000 )(
c+2000 )+( d−2000 )( e+2000 )( f −2000 )=10 ( a+2001 )( b−2001 )(
c+2001 )+( d−2001 )( e+2001 )( f −2001 )=100 をみたすとき, ( a+2009 )( b−2009 )(
c+2009 )+( d−2009 )( e+2009 )( f −2009 ) を求めよ。 |
[考え方]
式が複雑で4桁の数があるので,置き換えをしてもう少しシンプルにします。
[解答]
a+2000=A,b−2000=B,c+2000=C,d−2000=D,e+2000=E,f −2000=F とおくと,
3つの条件の式は,
( A−1 )( B+1 )( C−1 )+( D +1 )( E−1 )( F+1 )=1 ……@
A B C+D E F =10 ……A
( A+1 )( B−1 )( C+1 )+( D−1 )( E+1 )( F−1 )=100 ……B
求める式は,
T =( A+9 )( B−9 )( C+9 )+( D−9 )( E+9 )( F−9 )
となる。
@より,
A B C+(−A B−B C+C A )+(−A+B−C )+D E F+(
D E+E F−F D )+(−D+E−F )=1
整理すると,
( A B C+D E F)−(A B+B C−C A−D E−E F+F D )−(A−B+C+D−E+F )=1
(A B+B C−C A−D E−E F+F D )+(A−B+C+D−E+F )=9 ……C ←Aを代入
Bより,
A B C+(A B+B C−C A )+(−A+B−C )+D E F+(−D E−E F+F D )+(−D+E−F )=100
整理すると,
( A B C+D E F)+(A B+B C−C A−D E−E F+F D)−(A−B+C+D−E+F )=100
(A B+B C−C A−D E−E F+F D)−(A−B+C+D−E+F )=90 ……D ←Aを代入
C,Dを解いて,
A B+B C−C A−D E−E F+F D=99÷2=49.5
A−B+C+D−E+F=−81÷2=−40.5
よって,
T =A B C+9(A B+B C−C A )+81(−A+B−C )+D E F+9(−D E−E F+F D )+81(−D+E−F )
=( A B C+D E F )+9(A B+B C−C A−D E−E F+F D)−81(A−B+C+D−E+F )
=10+9×49.5−81×(−40.5)
←求めた値が代入できる
=3736
(答) 3736
残りはGW明けにUPします・・。