荒川小屋の夕食
今年の荒川小屋スタッフ
悪沢岳山頂付近で
荒川前岳お花畑と赤石岳
夕照の塩見岳
前小河内岳からの富士山

《13 南アルプス縦走記》 2005.8.14

 急遽とった夏期休暇。当初海の日の連休は北岳へと思っていたが、荒川・赤石へ変更する。
北岳へ誘っていた会のメンバーも、無理を言って1日目小河内岳までいっしょだ。しかし今朝から雨なのだがどういう事か。今日は全然降られないだろうという予定だったが。大鹿村入ってからはますます本降りである。車の中でしばらく様子を見る。ほとんどやんだので予定通り出発。計画より40分遅れだ。鳥倉林道の駐車場は満車。仕方なく少し戻った路肩へ駐車。林道歩きの間も続々と下山してくる登山者と行き会う。
 今回メンバーの中に本格的山行初めての青年が一人いる。実は職場の同僚だが、いつも私が話す山の話を聞いて是非連れて行ってくれと熱心に言うので、今回誘ってきた。 無事歩けるかちょっと心配。登山道入って30分ほどすると少し彼が遅れ始める。かなりペースに気を配ってゆっくり歩く。三伏峠も何人かの登山者で賑やか。テントも結構張ってある。少しゆっくり休んで出発。烏帽子岳まではみんな三伏峠から空身で往復している。重装備の我々を見てどこまで行くの?と必ず聞いてくる。
 天気は回復してきて、伊那谷の方は青空が広がってきた。烏帽子岳山頂からは富士山もしっかり見える。この時期のこの時間帯にここから富士山が見えるのも珍しい。烏帽子岳からは誰もいない静かな縦走路を歩く。前小河内岳の登りと、小河内岳の登りをがんばれば今日の目的地だ。初めての彼も大変そうだが、けっこうがんばて我々のペースについてくる。最後小河内岳の登りは遅れたが、無事小河内岳登頂。彼の満足な顔がうれしい。周囲の展望もすっかり広がり、
涼しい風がほてった体に心地よい。
 今夜の小河内岳避難小屋は5名の宿泊者。もっと混んでいるかと思っていたが、意外にすいていてうれしい。管理人の山中さんとは4年振りの再会。もう一人松川町の人がいて、いろいろと話が弾む。ビールもしっかり飲んでしまった。夕食も一息ついた頃小屋の外へ出ると素場らしい光景が。塩見岳と烏帽子岳の間は雲海が広がり、山々は照らし出され、その雲海も滝雲となって、流れようとしている。まさに待ち望んだ光景。すぐにカメラをセット。日没までの数分。大量にフィルムを消費したのは言うまでもない。
 翌朝他のメンバーとは別れて、ひとり荒川岳向けて出発。今朝はまさに梅雨明けを思わ                        せる本当に気持ちの良い素晴らしい朝だ。富士山もきれいに見えた。小河内岳からの稜
線歩きも早速撮影タイムとなってしまう。朝露にズボンを濡らしながら順調に高山裏小屋着。
小河内岳避難小屋から預かった物を管理人さんに渡す。お茶とせんべいをごちそうになる。
悪評高き管理人の嶋田さんだが、話せば実にいい人で、気さくにいろいろ話してくれる。
とにかく人が来ないと言っていた。「ここは南アルプスの縦走路中一番の秘境だからな。」
と、どこか自慢げに話していたのが印象的だ。
 いよいよ今回の難所、荒川岳への登りだ。見上げる擂り鉢窪の底から、はるか先の稜線までいつ来ても大変な登りだ。また今日はじりじりと照らされる。それでもじっくり着実にいっぽいっぽ高度を上げていく。前岳の崩壊地の縁から赤石岳が見えた時はやっと帰ってきたという気持ちになる。快晴の夏空に南アルプス南部の山々が輝いている。
 大休止の後撮影しながら下っていく。次第に花が増えてくる。カールを見渡せる所まで来る。咲いている咲いている。ここからでも斜面が黄色になっているのがよくわかる。今年は大豊作だ。とにかく去年同時期にほとんど花がなかった事を思えば今年はすごい。         
ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、クロユリもたくさん咲いている。過去何年かのうちでも
3本の指に入るだろう。しかし花は多いがなぜか人がいない。今日はまだ2人行き会った
だけだ。お花畑で撮影していた間も3人通過しただけだ。この素晴らしい光景をほとんど
独り占め。しあわせだ。
 1年振りの荒川小屋。今年から小屋番が変わったが、いつものスタッフと楽しい時間を過
ごす。いつきても気持ちよく迎えてくれる、大好きな山小屋だ。
 翌朝は日の出前に小屋を出発の予定でいたが、朝は厚い雲の中。結局そのまま寝てしまい、8時過ぎ千枚岳に向けて出発。悪沢岳方面も花はいいらしい。今日は山は見えているものの光はない。ちょっと撮影にはいまいちだ。それでも撮影しながらゆっくり中岳へ登り、悪沢岳を目指す。中岳と悪沢岳の鞍部付近、テガタチドリ、ミヤマオダマキが群生している。マクロレンズに変えてしばし撮影タイム。しかし人がいない。こうやって撮影していても全然誰の邪魔にならないのだから。ここから悪沢岳までも予想通りすごい花だ。こちらは赤色系が多い。ミヤマシオガマがかなり咲いている。撮影しなくても花を眺めながら歩くだけでも本当にしあわせだ。
 悪沢岳から丸山までの間はキバナシャクナゲがたくさん咲いている。千枚岳手前の岩稜帯にミヤマムラサキがひっそりと咲いていた。岩場を歩いて行って撮影したかったが、       
命がけの撮影になりそうなのでやめた。
 やはり1年降りの千枚小屋。いつものように別館でひとりゆっくり泊まる。本館は10人く
らいの宿泊者だ。夕方小屋の裏手から赤石岳を見ながら明日の好天を祈る。
 4時前に小屋発。頂上手前いつもの場所で三脚をセット。まあまあの朝焼けとなる。がその後は厚い雲の中へ入ってしまい曇りとなる。今日は花と山を組み合わせてたくさん撮影したかったが残念。
 昨日来た道をゆっくり荒川小屋へ戻る。だんだん青空も広がってきた。今日は悪沢岳付近は風が強い。
休憩するにも風を避けてやっと休憩する。梅雨が明けたのに山の上の天気はいまひとつはっきりしない。
 小屋へ戻ってお昼寝。ゆっくり眠れた。夕方から厨房を手伝う。今日は平日では一番の宿泊者。夕方の厨房は大忙し。食堂も満席となる。何度もこのHPでも書きましたが、この荒川小屋、ほんとうに食事のおいしい小屋です。なんといっても元料理人が食事担当ですから。夕食のカレーも本当に手作りです。レトルトや缶詰を出す小屋が多い中、手間かけて作ってます。そして夕食もカレーだけでなく、必ずおかずが何品か付きます。もちろん       
みそ汁も。食堂メニューのラーメンも麺こそ乾麺ですが、スープは別にちゃんと作ります。
具もしっかり入ります。一度お試しあり。荒川丼もお勧めです。
 最終日の朝はゆっくり起きてゆっくり朝食。小屋のスタッフと裏山を散策しながら出発。今日も高曇りのぱっとしない天気だが、日差しは強い。いつもと違うアングルで荒川岳を見ながら気持ちよい稜線歩き。大聖寺平でスタッフと別れ広河原小屋へ向けて下山。舟窪手前深緑のダケカンバと荒川岳を撮影。あとはただひたすら下るのみだ。撮影しなければ早い。あっという間に広河原小屋だ。ここまで下りてくると暑い。山はけっこう寒かったので、下界の暑さを忘れていたが、やはり梅雨が明けて本格的な暑さになっていた。
 広河原小屋で着替えたり、昼食を食べたり1時間の大休憩。こんな古ぼけた小屋でもあればやはり
ありがたい存在だ。
 強い日差しの河原歩きが始まる。これだけ暑い時の徒渉はけっこう気持ちいい。が、やはり水は冷たい。小渋川の水量は予想していたほど少なくない。今年はうんと少ないだろうと思っていたが、意外だった。高山の滝でしばし撮影タイム。昨年パノラマカメラで何枚も撮影したが、納得の撮影が出来なかったので再挑戦。正直あまり絵になる滝ではないの
だが、そこは腕でカバー。会心の1枚になったか仕上がりが楽しみ。
 5日振りの街は強烈な夏の暑さになっていた。
 
 
《コースタイム》
 ■7/17
 松川町役場7:00鳥倉林道8:55三伏峠12:50〜13:10烏帽子岳14:00
 小河内岳16:00
 ■7/18
 小河内岳避難小屋6:25高山裏避難小屋8:48〜9:05荒川前岳12:20荒川小屋14:00
 ■7/19
 荒川小屋8:40中岳10:21〜10:44悪沢岳12:34〜12:47千枚岳13:59〜14:14千枚小屋14:28
 ■7/20
 千枚小屋3:50千枚岳4:50〜5:30悪沢岳8:10中岳10:05荒川小屋11:30
 ■7/21
 荒川小屋7:00大聖寺平8:28広河原小屋10:43〜11:47湯折15:17
                             






ひとこと