2010年6月8日 中部国際空港〜鹿児島空港〜屋久島空港まで自宅から約7時間で予定通り屋久島着。やはり飛行機は速い。乱気流で機内に悲鳴が上がるほど鹿児島から屋久島の機内は揺れた。屋久島空港着陸直前の機内から見た屋久島の全容は聞いていた通り、海岸から山が立ち上がり、正に海上アルプスと言われるほどのちょっと異様とまで言える島の姿だった。
 鹿児島までは雨は降っていなかったが、屋久島は厚い雲に覆われ、小雨が降っている。空港横の観光協会に山以外の荷物を預かってもらい、タクシーへ乗り込む。途中食料を買い込み、淀川登山口へ。親切なタクシーの運転手さんが、島の話し、山の話しを聞かせてくれる。が、こちらはちょっと眠い。途中紀元杉に立ち寄る。道端から見られる樹齢1000年くらいの大きな杉。

         紀元杉

 1時間ちょっとで登山口へ着。本降りとなってしまった雨の中、カッパを着こんで出発。今夜はここから40分の淀川小屋泊まり。タクシーの運転手さんが多分今日は誰もいないよと言っていた。久しぶりの2泊のテント装備が重い。それに中部国際空港で早い昼を食べてからほとんど何も食べていない。すでに時間は5時過ぎ。無性に腹が減って、ザックからクッキーを出して雨の中食べる。間もなく淀川小屋。4人先客がいた。一人長野県から来たという青年もいた。もう10日も屋久島にいるという。小屋の前のテラスでいろいろ話しをする。この小屋へ泊まっていると言う事はみんな縦走するか、してきた人たちだ。みんな明日の天気を心配している。天気予報では九州南部晴れて暑くなるとの事。先ほどのタクシーの運転手さんも、「良い時に来たね。明日は天気になるから良いね。」なんて言ってくれて、こちらもすっかりその気でご機嫌だった。しかしその後屋久島は全然天気予報が当てはまらないところだと実感する事になる。夜小屋の屋根を強く叩く雨の音を聞きながら眠った。

    きれいな淀川小屋

6月9日 朝には雨は上がっているだろうと思っていたが、多少夜より小降りになったくらいで降り続いている。まあそのうちやむだろうと期待して、5時半小屋を出発。小降りでちょっと止み間もあるが、カッパは着たままだ。
 花之江河と呼ばれる湿原を通り、少しずつ高度を上げていく。が、今回淀川登山口からの宮之浦岳は、標高差が少なく、比較的楽なコースだ。時間と天気次第では、縦走路途中のピークも立ち寄りたい所だが、今回はパス。大展望の黒味岳へは行ってみたかったが、この天気では仕方がない。次第にシャクナゲが登山道周辺に増えてくる。投石平と言われる開けた所では、あまりのシャクナゲの群落に歓声が上がる。大休止を兼ねてしばし撮影タイム。霧の中の濡れたシャクナゲが実に良い感じだ。これで展望があれば更に良い写真が撮れるのだが…。何も見えないのはつまらない。投石岳、安房岳とシャクナゲに彩られた稜線を宮之浦岳へ向かう。しかしすごいシャクナゲの群落だ。これだけ咲いている山は知らない。

   宮之浦岳山頂付近のシャクナゲ

宮之浦岳山頂は昨日小屋で一緒だった人たちに、日帰りで登って来た人たちもいて、結構賑やか。それに岳参りと言われる地元の人たちのお参り登山?にも遭遇して、雨の中やはり人気の百名山です。山頂で一瞬雲が流れて晴れるのかと思われる瞬間がありましたが、やはり瞬間だけでした。何も展望を得られない山頂を後に、今日の宿泊地、新高塚小屋へ向かいます。山頂の北側もすごいシャクナゲの群落です。本当にこれで山が見えていれば。もう絶対再訪しなければいけない。堅く心に誓ったのでした。
 平石と言われる大きな石が並んだおもしろい場所。雨宿り出来るほどの大きな石が並んでいます。このあたりでシカがたくさん出てきました。登山道を悠々と笹を食べながら歩いています。登山者が相当近づいても逃げません。こちらが困るくらいです。子鹿もいて結構かわいいです。
 
時折強く降る雨の中、モクモクと新高塚小屋を目指します。霧の中に、杉、シャクナゲ、深い緑の林が幻想的に演出されます。雨の中三脚を立ててしばし撮影。苔むした倒木もそこら中に見られ、被写体には事欠きません。
 予定では今日は高塚小屋まででしたが、雨の中もう1時間歩けるだろうか、きれいな広々としたデッキのテント場に、
もう今日はここまでにして、テントを張る事にした。
 新高塚小屋は昨日の淀川小屋よりも大きく、こちらも無人だがきれいな小屋だ。豊富な水も出ていて実に快適だ。ただシーズン中は大混雑するとの事。確かに大きいと言っても定員50名くらいだろうか。テント場については、快適なデッキの上は、詰めて張ってもせいぜい5,6張り。その周辺に張っても10数張りが限度だろう。そしてトイレは一つ。隣に携帯トイレ用テントが2張りあるが、完全にオーバーユースだろう。実際トイレはもう満杯状態。定期的にくみ取りをしているとの事だが、携わるボランティアの方々の苦労や、維持管理の費用や手間を考えると、このままの状態ではいけないと思う。夏のハイシーズンの小屋を想像するとぞっとする。
 北アルプスなどと比較すると、完全に需要にハード面の整備が追いついていない。世界遺産になって、大勢の人々が訪れるようになって、この小さな島の自然が悲鳴を上げているようにも感じる。こんな事を書いては、自分も行かなければ良いのにと思ってしまうが、何らかの対策を考えていかなければいけないだろう。
今夜は小屋が10人くらい。テントは4張りでした。遅くに縦走してくるパーティーもいて、しかもガイド登山。ちょっと大丈夫?と思ってしまう。夜には満天の星となり、明日こそ快晴かと大いに期待。
 翌朝朝食を食べながら外を覗けば、見事な朝焼け。最終日にようやく晴れ間が。と、うれしくなってしまう。出来れば昨日晴れて欲しかったが。
 他のパーティーよりもいち早く出発。縄文杉を目指す。新高塚小屋から1時間。やっぱり昨日無理して来なくて良かったと思う。高塚小屋まで下って登って結構大変。高塚小屋は誰もいない。小屋から10分の縄文杉。こちらも1組いるだけ。ゆっくり撮影。樹齢2000とも7000年とも言われる縄文杉。さすがに大きい。超広角レンズでも収まりきらない。ここもハイシーズンには交通整理?が出るほど大混雑するという。登りと下りに順路が別れて案内板が出ている。こんなに静かな時に見られて良かった。
 ウイルソン株までは静かな登山道を行く。途中2本の枝がつながった夫婦杉やそれ以外にも大きな杉はいくらでもある。ウイルソン株まで来ると、ゾクゾクと登山者が登ってきた。時間的にちょうど朝出発してここで行き会うのだろう。株の周辺は座る場所もないほど混んできた。6月の平日でこの状態だ。半分くらいの人がガイド登山だ。このウイルソン株、切られていなければ、縄文杉よりも大きいと言われている。確かに切り株の太さはすごい。株の中に入れるが、中は10畳あるという。
ウイルソン株からちょっと下ったところにあるこれまた大きな翁杉。個人的には縄文杉より好きだ。縄文杉はあまりにも整いすぎているというか、立派すぎて絵になり過ぎだ。あまり知られていない、いや名もない登山道の傍らにたたずむ多くの杉に、「これは良い」とカメラを向けたい物はたくさんあった。 ウイルソン株から先はゾクゾクと登ってくる登山者とすれ違いながら、人気の山域だなとあらためて実感する。
 ウイルソン株から30分。大株歩道入り口。ここからが安房森林鉄道を行きます。立派な公衆トイレもあります。昨日宮之浦岳山頂からずっと前後して歩いてきているフランス人女性とカメラの話しをちょっとだけ会話。もちろん通訳を介して。結構良いカメラで盛んにシャッターを押していました。
 この森林鉄道もう軌道跡だけかと思っていたら、まだ現役で動いているとの事。
 楠川別れまで単調な軌道を黙〃と歩く。が、結構途中撮影したいところは何ヶ所もある。結局この日も朝晴れただけで、日中はずっと曇り空。やはり屋久島の天気は分からない。こんな天気の方が、森の撮影には向いている。うっそうとした杉の林や、苔むした原生林が本当にきれいだ。
 楠川別れで白川雲水峡への道をとる。辻峠まで一登り。ここへ来て雨が降り出す。カッパを着るが間もなくやんでしまう。不安定な天気だ。峠までの1時間の登りだが結構長かった。
 辻峠から白谷雲水峡まで、素晴らしい林がずっと続く。苔むした林と巨木。どこでも絵になる。何度も三脚をセットして撮影。「もののけ姫の森」として、あまりにも有名になってしまったが、本当にきれいな所だ。できればあまり知られずにこのままの自然で残っていて欲しい。今回は下山時の通過だけとなってしまったが、白谷雲水峡だけでも、やはり巨木もたくさんあり、きれいな滝なども点在していて、時間があればゆっくり見て回りたいところだ。
 撮影に時間を取りすぎてしまった。バスの時間を気にしながら、急ぎ足で雲水峡の入り口へ。
 バス停に到着すると間もなく宮之浦行きのバスが来た。下山した宮之浦の町はフェリー乗り場などがあり意外と都会に感じる。予約しておいたレンタカーを借りて今夜の宿へ。麦生にあるヒュッテ「フォーマサンヒロ」。夫婦2人でやってる小さな宿ですが、心のこもったもてなしと、おいしい料理に大満足でした。
 山の疲れで前夜はぐっすりと眠れた。今日はレンタカ−で島内1周。観光しても1日では回りきれないほど見所はたくさんあります。千尋の滝、大川の滝など滝だけでも大小かなりあります。
 大川の滝から先は西部林道と呼ばれる林道を永田の集落へ。その間がまさに自然の宝庫と言った感じ。まず猿と鹿がたくさん出没します。こちらが待っていなければ通過できないくらい我関せずと言った感じで、堂々と道路を占領しています。小さな子猿もたくさんいてかわいいです。
 宮之浦の町へ出て、文化村センターで屋久島の自然についての展示や、大型スクりーンでの大迫力の映像を見学。こちらも時間があればゆっくりと見たいものだ。その後おみやげなどの買い物と、荷物を発送して今夜もう1泊屋久島泊まり。
 
 5日間の滞在で、すっかり屋久島の魅力にはまってしまいました。機会を作って是非再訪したいと思います。

                   千尋の滝→

















ひとこと

平石とシャクナゲの群落

屋久島・宮之浦岳山行記
     2010.6.8〜6.13

新高塚小屋とテント

ウイルソン株

安房森林鉄道