Tarot FILES #2-9


 今、オレの手元にはハッサの書いた詩が一つ残されている。ほんの数週間前に、スナックで一緒に飲んでいると、ハッサはオレのメモ帳を取り上げて、黙ってその詩を書き上げた。


くじけちゃいけない
いつでも
夢をあきらめないで

心の扉を閉じたら
何も見えなくなる

苦しいときには
いつでも
大空に飛び込もう

太陽目指して
はばたこう
自分を信じて

幸せは
来てはくれない
自分でつかみとるもの

本当にやりたいことを
自分で見つけるのさ

いつも本気で走らなければ

本当のことは
わからないぜ

だから
心の炎
燃やし続けよう

燃えて
燃えて
燃え尽きるまで

そして
赤く強く
燃えて
燃えて
燃えろ

魂の炎

だから
心の炎
燃やし続けよう

燃えて
燃えて
燃え尽きるまで

天をこがせ


おそれちゃいけない
いつでも
つまづき転ぶことを

風に押されて倒れたら
また起きて走ればいい

悲しい時には
いつでも
星空に飛び込もう

天の川を
泳いで行こう
全てを信じて

才能は
眠っているもの
自分で掘り起こすもの

できると思えばできるし
やらなきゃできないのさ

自分を諦めてしまったら

何もかも
つまらなくなるぜ

だから
心の炎
燃やし続けよう

燃えて
燃えて
燃え尽きるまで

そして
赤く強く
燃えて
燃えて
燃えろ

魂の炎

だから
心の炎
燃やし続けよう

燃えて
燃えて
燃え尽きるまで

天をこがせ

酒井


 この詩にどれほどの意味が込められているのか、オレには理解できない。しかし、この詩は、まるで自らの死を予感して書かれたようにも思える。残された人生を熱く、激しく生きようとしたハッサ。燃え尽きたら、その命はそこで終わりじゃないか。その命を燃やし尽くして何が残るというんだ。なぜ、そこまで必死になって生きなければならないんだ。

 オレは、ハッサの葬式出ることはできなかった。その死が、タナカや、ハッサの家族、オレの家族、仕事仲間、剣道の教え子たち、そして、多くの地元の住人たちにどれほどの衝撃を与えたか、オレにはわからないし、今のオレには何の関係もないことだった。今のオレが、なぜハッサのために涙を流せないのかも分からない。でも、このままハッサのことを忘れてはいけない。人として、しばらく立ち止まって考えるべきだと思った。

 ふと思い出した。オレは、日本を離れる前に会った全ての友人たちと必ず握手をしてから別れた。それなのに、ただ一人、ハッサとだけは握手で別れることができなかった。間違いなく、ハッサただ一人だ。この不気味な一致に背筋に寒気が走る。オレにはそれが、ハッサの死と深く関わっているような気がしてならない。ハッサの死は、本当にアクシデントだったのだろうか?

 大の親友だったのに、最後はケンカで別れ、もう二度と仲直りはできないのだ。

 ハッサの死から、オレは何を学べばいいのだ?

 オレは、この手でハッサを救うことができなかった。それだけは間違いなく事実だ。歴史に刻まれるべき事実なのだ。人は歴史から多くを学ぶ。オレは、愛を学ぶ必要があった。


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