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綺羅と伊里座が泉に到着した時には既に冷気と突風は収まりつつあった。 しかし、綺麗な水を湛えていたであろう泉も凍りつき、 泉の中に見える魚たちは泳いでいた姿のまま時を止めている。 そして、凍りついた大地の所々には大きな氷柱が氷の矢の様に大地に突き刺さっていた。 「これは・・・」 泉の近くには先ほど先に泉に向かっていた男達が倒れている。 綺羅は一人の男に近づく。 男達の体には矢に射抜かれた様に氷柱が突き刺さり、全身は凍りついたように冷たい。 男は小さなうめき声を上げた。 綺羅は男に手をかざし、小さな声で呟いた。 「癒せし白き女神よ。その白き吐息<ブレス>、白き御手<ハンド>を我に・・・ヒーリング」 綺羅のかざした手が白く輝く。 その瞬間、男は意識を取り戻し、ゆっくりと体を起こした。 伊里座も他の男達に治療魔法を唱え、意識を取り戻した男達は体を起こしていく。 「ここへ住んでいた女性は還ってしまったのですね・・・」 主人を失った小さな小屋に綺羅と伊里座が佇んでいた。 窓からは優しい太陽の光が入り込む。 綺羅は窓から外を見つめた。 泉は次第に氷から水へ姿を変え、木々からこぼれた水滴が太陽の光を反射している。 綺羅の心の中に先ほど治療を終えた男達の言葉が浮かぶ。 -彩羽は凍りついた泉の上に踞り、まるで泣いているかの様だった- -こちらを見つめた青い瞳には狂気が浮かび、俺達に氷の矢を放った- -倒れていく俺達を見つめ、彩羽は声にならない様な悲鳴を上げた- -その時、何もない西の空に突然大きな門が現れ、彼女を連れ去っていった- 「・・・西の空の大きな門」 綺羅は紫色の瞳を伏せる。 テーブルの上にカゴの中に摘まれた沢山の果物が置かれていた。 伊里座はその果物の一つを手に取る。 「昨日逢った女性は・・・精霊族の方だったのですね」 伊里座は少し寂しげに呟いた。 ********************************* エンディングレベル:★★★☆☆ ********************************* |