綺羅は彩羽に向かって両手を掲げた。
「氷の結晶よ、彼の者を封じる氷の牢獄となれ・・・」
「綺羅っ いけません!!」
伊里座の止める声は綺羅には届かず、最後の言葉を紡ぐ。
「アイス・ウォール!!」
彩羽の体に一段と強い冷気がまとわりつく。
そして、体に氷が生まれ、次々に体を青白い氷が包み込んでいく。
しかし、その瞬間、氷に大きな亀裂が生まれ、氷をはじき飛ばした。
飛ばした氷は綺羅と伊里座に氷の矢になって襲いかかる。
「聖なる魔詩<マガウタ>よ、力に耐えうる大気<カゼ>の幕となれ・・・レジスト!」
氷の矢は彼らに届くことはなく、空気の流れの幕に阻まれた。
「綺羅、レジストはすぐに抗力が無くなります。消えると同時にスリープを唱えて下さい。
彼女を傷つけないように」
「はい、伊里座」
レジストの空気の流れはゆっくりと速度を落とし、消えていく。
「魔詩<マガウタ>よ、安らぎと眠りへ誘え・・・スリープ!」
綺羅が紡いだ魔法は彩羽に届く。
そして、小さな声を上げると、彩羽は崩れるように深い眠りへと落ちて行った。
彩羽が眠りについたと同時に辺りには太陽が再び優しい光が差し始め、
凍りついた木々を、泉をゆっくりと溶かしていく。
木々からこぼれる水滴は光に反射し、宝石のように輝いて見えた。


ツギヘ



ヤメル