誰もいない家
薄暗い部屋には沢山のプレゼントの箱

16歳の誕生日

月明かりに照らされ庭の沢山の白い薔薇たちが白く浮かぶ
少しだけ開いた窓から部屋の中にも薔薇の香りが漂う

「君を迎えに来たよ」

突然現れた貴方は懐かしさを帯びた優しい瞳で微笑む

「貴方は・・・?」

その言葉に少しだけ貴方の瞳が曇る

「・・・思い出して私との約束を」

貴方は私の手をとり、優しく口づけた


私の中で何かが弾けた


貴方の少し冷たい唇
優しく寂しい瞳


遠い過去と未来の記憶

「あぁ、貴方は・・・」

誰もいない家
白い薔薇が咲き誇る庭から闇に消えるように姿を消した


時が静かに流れる


深い皺、白い髪
いつのまにか老いてしまった躰

ベットの傍らに痩せた私の手を握る貴方
出逢った頃と変わらない優しい口づけ

貴方は出逢った頃の姿のまま
優しい瞳の奥に暗い孤独が見える

動かない躰
貴方を見つめる瞳から涙が溢れた

あぁ、私は
私はまた貴方から旅立ってしまう
孤独を抱えた貴方を置き去りにして


貴方は旅立った私の躰を優しく抱き上げた
「君を見守っているよ・・・いつまでもいつまでも」


誰もいない家
薄暗い部屋

16歳の誕生日

何度も何度も繰り返す

光の中で生き続ける孤独な私
闇の中で生き続ける孤独な貴方

繰り返していく生命
繰り返す孤独

永遠の孤独


「君から光の祝福を奪う事は出来ない」

永遠を求める私に
そう寂しげに優しい瞳で呟いた

優しすぎる闇の住人
孤高の貴族

寂しげに微笑む貴方

老いていく私の躰
孤独を抱えた貴方の瞳

それでも貴方は私に微笑み続ける

動かない冷たくなった躰
貴方の瞳から涙がこぼれる


「君を捜し続けるよ・・・・永遠に」


言えなかった言葉
孤独を抱えた優しい貴方の瞳


哀しまないで
私は貴方に逢いに未来へ旅立つの

貴方はけして孤独じゃない
永遠の孤独じゃない

私を見つけて
私を捜して

私は永遠に貴方と巡り逢える







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