僕の友人の話をしよう

彼はこの時期に姿を現す
「本当はいつも側にいるのに見ようとしないだけだ」と彼は言うけど
僕はこの聖なる時期にしか彼に逢うことは出来ない
彼はいつものテラスに座り、椅子に体を傾けながら紅茶を飲んでいる

彼はいつも不機嫌そうに僕に言う
「この時期になると人間達は熱心に神様へ祈りを捧げる」
彼は黄金の髪を鬱陶しそうに掻き上げる
ここから見える街並みは赤や緑の光にあふれ、賛美歌が遠くから聞こえる
聖なる青い彼の瞳に街並みと僕が交互に映る

彼の仕事は人間達の心を神様の元へ届けること
「オレは純粋な心を持つ人間だけを救ってやる」と彼は言うけれど
彼には濁った心を洗い流す力がある
あの輝く黄金の髪と清らかな青い瞳を見たら
誰もが邪悪な力を無くしてしまうんだ

彼の神様への想いは絶対で
神様の話をする時だけ瞳が少し優しくなる
僕には向けることの無い優しい瞳
いつも不機嫌そうな彼も優しい光にあふれている

僕にはその聖なる黄金の髪も清らかな青い瞳さえ持っていない
あるのは暗い闇の色だけ
黒い瞳を隠す長い髪も漆黒の空のよう
眩しそうに彼を見つめる僕に彼はそっと囁いた
「包み込む夜の様にオレを安心させる」
そして、僕を見つめ少し照れながら微笑んだ

彼は今日も姿を現す
少し伸びた黄金の前髪を鬱陶しそうに掻き上げながら
いつものテラスに座り紅茶を飲んでいる
優しい青い瞳に僕を映しながら









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