緑と赤の光が溢れる白い季節
僕は彼を待ちながら紅茶を飲んでいる

「・・・僕は、人間が大好きなんだ」

「・・・? そんな理由でここにいるのか?」
少しだけ驚いた表情を浮かべた彼を思い出して
少しだけ僕は笑みを浮かべた

「僕は君たちの事も大好きだよ」



黒き世界
漆黒と安らぎが共存する世界

黒き世界を統べる王が住まう城の奥深く
世界の真理が集まる書籍庫
その奥に人知れず隠されるようにある泉
人間の世界を映す不思議な泉

僕は一人、泉を見つめていた

闇色の長い髪に同じ色の瞳
背中には漆黒の翼
漆黒の翼を時折小さく羽ばたかせながら
闇色の瞳で泉に現れる様々な景色を見つめる

「お前はいつもここにいるね」

その優しい声に僕は振り向き、その姿に息を飲んだ

闇色の長い髪に深い闇の瞳
背中には漆黒の翼
そして、鋭く尖った銀の角

この世界を統べる王
彼の前では闇ですら頭を垂れる

「お前は人間をどう思っている?」

「僕は・・・僕は人間が好きです。ここから見る人間はとても魅力的で
 ・・・あの鮮やかに輝く魂は、きっとどんなモノよりも強い」

「彼らは悪魔の様に強欲で天使の様に純潔だ。
 そして・・・我々が思っている以上に魂は輝いている」

そう呟きながら王は優しく微笑んだ
深い闇の瞳は夜のように安らぎを与えてくれる

「人間の世界を同じ目線で見ておいで。
 ・・・きっと、世界はもっと色鮮やかに輝いている」



窓の外を見つめる
白く曇った窓ガラスから純白の雪が舞い降りてくるのが見える

「・・・そろそろティーカップを温めておこうか」

白い雪を従えた白い世界からの来客
この時期にだけ姿を現す少し不機嫌な天使

綺麗な黄金の髪を揺らしながら、青く力強い瞳の天使が空から舞い降りる

窓の外を見つめる
舞い降りる白い雪と美しい白い羽

「よう」

純白の翼を羽ばたかせながら、彼は手を少しだけ挙げた

光り輝く金色の髪
宝石の様な青い瞳
鬱陶しそうに短めな髪を掻き上げる

「紅茶、入れるね」

ニッコリと微笑む僕に彼は少しだけ微笑んだ

今年も色とりどりの世界を見ながら
僕たち二人は紅茶を飲んでいる










-back-