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白い世界 白き翼を持った者達の住まう世界 白き世界の白き宮殿 美しく聖なる輝きに満ちた宮殿の裏庭 輝ける天使が大木の根元に寄り掛かるように座る 木々に囲まれた小さな泉 木漏れ日の光を浴びてキラキラと輝く 誰もが忘れてしまった場所 輝ける天使は微かに通り過ぎる風を純白の翼に感じながら 青い瞳で雲一つ無い空を見上げる 「僕の瞳に映るモノがあの人の瞳に届けられたら良いのに」 天使は思いをはせながらそっと瞳を閉じた 光と闇 白と黒 聖と邪 そして 天使と悪魔 けして混ざり合う事の無いもの 気高きあの人は剣を取り自ら戦いの場へ赴く 美しい黒髪に映える純白の翼を漆黒に染めながら 闇を統べる王となるために 天上の白き世界から地の底闇の世界へと 追いかける事が出来ない世界へ 優しい笑みを浮かべながら 何故あの時僕の手を引いてくれなかったの? 僕は喜んで共に堕ちていったのに 何故僕を選んで下さらなかったの?神様 あの人の美しい白い翼が黒く染まっていく姿を見たくはなかったのに あの時から僕の魂は失った欠片を探し求め続ける あの気高く美しい黒髪と優しい微笑みを 「せめて、せめて僕の瞳に映るモノがあの人の瞳に届けられたら良いのに」 この輝く光の世界をあの人は懐かしく感じてくれるだろうか? 瞳を開き降りそそぐ光に祈りを込める 僕は眩しげに瞳を細めそっとあの人の名前を呟いた |