森の奥深く
小さな泉の畔に一人の若者
古木の幹の深い茶色の髪、春の新芽の淡い緑の瞳

澄んだ泉の水
厚い雲に覆い隠された灰色の空が映る

若者の周りには沢山の双眸
森の住人達の視線
住人達は若者を静かに見つめている


ザワ、、、ザワザワ


冷たい
冷たい風が通りすぎ、泉に小さな波紋を作る

若者は伏せ目がちに微かな声で呟く

「・・・・時が来た」

若者は周りに佇む住人達に目を向ける

「・・・僕は行くよ・・・」


ザワ、、、ザワザワ


再び冷たい風が通りすぎる

若者はゆっくりと歩き出す
森の住人達の視線は若者の背中を見つめている


ハラリ、ハラリ


若者が歩き出したのを見届けた様に
周りの木々の葉が一斉に舞い始めた

一葉、一葉と
音も立てず冷たい風に身を任せ大地へと降りていき
森の住人達も一匹、一頭と去っていく

そして、
残されたのは泉

冷たい風を音楽に
舞い降りた葉とダンスを踊り続ける


若者がこの地に戻るまで










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