誰も知らない泉
季節を忘れた枯葉が舞い降りて
泉に小さな波紋を作る
泉の畔に一人の若者
古木の幹の深い茶色の髪
春の新芽の淡い緑の瞳
若者は空を見上げた
澄み渡る空
暖かな春の風
「ただいま」
その言葉を合図に
木々が一斉に葉をつける
淡い淡い新芽の緑が
辺り一面を染め上げて
泉にも優しい緑を映す
「ただいま、みんな」
若者が辺りを見渡す
そこには緑に誘われて
森に住む動物たちが集まっていた
嬉しそうに黒い瞳を潤ませ
若者に近づく鹿
若者は嬉しそうに微笑んだ
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