僕はマスターの事が大好きだった。

その優しい笑い声も
その黙ったままの怒り顔も
そのうつむき哀しむ姿も

貴方のすべてを僕の瞳のレンズは映すことが出来た。

マスターが僕に命をくれた。

人間の瞳の様なレンズ
体を流れる紅いオイル
オイルを身体中に運ぶ鼓動
温度を伝える人工肌

機械仕掛けの僕のカラダ

でも、何かがタリナイ。

ある日、僕はマスターと映像を見た。
映し出される映像には
女性の頬から落ちる雫

キラキラ輝く宝石

マスターは僕に笑いかける

「ココロとカラダの痛みから流れるナミダは君には必要ないだろ?」

機械仕掛けのカラダから何かが軋む音が聞こえた。


マスターに連れられ僕は初めて施設の外へ出る。

降り注ぐ太陽
輝く緑
僕の瞳と同じ色をした大空
小さなレンズに世界が映る

突然、僕たちの目の前に現れた車
僕はマスターの前に立ちふさがった

これはプログラム?
それとも・・・。

機械仕掛けのカラダから部品が飛び散った。

ただ、貴方を守りたかった。
計算されたプログラムよりも早く僕は貴方を守りたかった。
大好きなマスター

マスターは僕に駆け寄った。
動くことが無くなった重い体
地面に散るマスターが造ってくれた大切な部品達
太陽の光に寂しく反射している

マスターが僕の名前を呼びながら僕の瞳を見つめる
マスターの瞳からあふれるナミダ
僕の顔に落ちる暖かな雨

キラキラ輝く沢山の宝石

それは僕の瞳から頬を伝う

大好きな貴方が流してくれた
僕のナミダ









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