〜 耐震補強工事実例 駒ヶ根市の家  〜


改修前の現況

この住宅は昭和35年に建設され数度の増改築を経て
現在の形に至っています。
一番大きな増築が既存の1階の上に2階を増築したものでありました。
このような増築の場合、既存の1階において耐震壁が少ない状況になります。
特に今回の場合1階の3室つながる部屋の部分(下図灰色部分)において
耐震壁が少なく大地震時にはそこを中心に被害がおきる事が
想定されました。




改修前平面図

         


         

〜1階座敷及び洋室廻りの現況〜
建具にて仕切られる間取りで壁が少ないのが特徴です。

この現況において 耐震診断 を実施したところ総合評点は0.87という
評点であり大きな地震時には建物が
やや危険であると判定されました。



現在の生活の中では3部屋繋げて使用する事は無く
また和室も1部屋だけで良いとのお施主様の要望を
踏まえて和室から洋間へのリフォーム
さらには床の段差解消工事等を加えながら
以下の大きく3つの耐震補強工事を
ご提案、実施させていただきました。

@ベタ基礎新設工事(基礎の耐震性能を高める)

A耐力壁新設・接合部補強工事(地震時に抵抗する耐震壁を増加させる)


B開口部におけるフレーム補強工事(建物のバランス性能を高める)




改修後平面図

耐力壁においては上図の赤色の部分において
壁を新設または今ある壁を補強しました。
南側の大きな開口部においてはフレーム補強を行う事で
建物全体のバランス性能を上げました。


@ベタ基礎新設工事

      

座敷及び洋室部分の床下はベタ基礎とするため畳や下地材を撤去しました。

       

コンクリートを打設する関係上、床下の土をすきとります。

       

防湿シートを施して防湿対策を施します。

       

床下に鉄筋を全面配筋します。
13ミリ径の鉄筋を20センチ間隔にて配筋しました。

       

間仕切り下部に新たな布基礎を新設しました。    鉄筋端部は既存布基礎へ差込ます。

       

配筋終了後コンクリ−トを床下全面に打設します。
防湿・白アリ対策としても有効です。


しっかりとした床下の基礎工事が完了しました。



A耐力壁新設・接合部補強工事

ベタ基礎工事完了後、骨組みの接合部の補強及び
耐力壁の補強工事を行いました。

        

土台と柱、柱と桁の接合部は。JBRA(ジャブラ)というアラミド繊維シートを使用しました。
これは高速道路の橋桁などの補強材にも使用される高強度の繊維シートで
鋼材の約 5 倍の引張強度があります。
リフォーム等で金物が使用できない所にも施工できるのが特徴です。

       

1階と2階の柱を通しボルトで緊結する補強工事(写真左)
1階の梁と2階の土台を金物で緊結する補強工事(写真右)
2階を増築した住宅に有効な補強工事です。

       

筋交い端部の金物補強工事(写真左)
柱端部、桁端部の金物補強工事(写真右)

        

耐力壁となる構造用合板を設置するために下地の骨組みを作製します。

       

耐力壁は基本的に構造用合板(面材)を使用して
土台、柱、梁あるいは胴差しといった横架材を
しっかりとつなぎ止めます。

        

床の下地材も厚い構造用合板を使用して水平抵抗力を高めます。

1階の座敷、洋室周りの耐震補強工事が終了しました。



B開口部におけるフレーム補強工事

一般の住宅では南側、東側に大きな開口部が設置されて
北側との壁のバランスにおいて大きな地震時には
ねじれ が生じると言われています。



大きな地震時に建物の ねじれ によって起きた被害例


大きな開口部において高強度のフレームを組み込む事により
建物のバランスを少しでもよくするのが
J-耐震開口フレームです。

光・風といったマド本来の機能を損なわず、開口部を
強くして家全体を耐震化する画期的な工法です










       

南側、縁側部の現況
大きな開口部が連続する南側特有の壁面構成です。
大きな地震時には ねじれ による被害も想定されます。



南側開口部の特性を損ねないように耐震化を図りたいとの要望
の中で J-耐震開口フレーム のご提案をしました。


       

サッシ、土台、床等を撤去します。

       

       

基礎にフレームを設置する為のケミカルアンカーを施工します。



開口フレームの設置に入ります。


       

あらかじめ工場で組み立てられたフレームを現場へ搬入します。

       

開口フレームが設置されたところ。

             

開口フレーム脚部はケミカルアンカーボルトにて基礎へ緊結されます。

                   

縦フレームは際の柱へボルトにて緊結されます。

       

サッシ枠を組み込んだ状態。フレーム同志は特殊な金物とアラミド繊維シートにより
しっかりとした剛接合が構成されています。

       

サッシが組み込まれた状態。
この後外壁等の復旧を行い工事は終了します。


地震時において ねじれが少ない 南側の壁面ができあがりました。




以上の耐震補強工事を行い
耐震診断 における総合評点は 1.44 になりました。
これは診断上一応安全と思われる 1.0 を上回るものです。
耐震補強工事を行う事により大きな備えができたと言えます。