夫作三との結婚3
彼の帰ったことは、殊のほかの喜びではありましたけれど、思いもかけないことが、次から次えと押し寄せてきました。大勢の兄弟がそれぞれの居場所なくして、自分の家に帰られたのです。食料は直ちに其処をついてしまい、農家といえども穀物は配給に頼らねばならず、僅かの米と粉といっても、もろこしでした。言葉にはならないほど苦しみを味わいました。戦後の苦しみは、生き残った国民全体が受けた思いでしょう。戦争の犠牲になられた人たちのことをおもえば、申し訳なく言葉を慎まねばなりません。今にして振り返れば苦しかった新婚時代でした。戦争からかえることの出来なかった若者たちを思えばあれでよかった思います。苦しみを味わったのは、新妻の自分だけではなかった。夫の作三そして舅姑、いくたりもの小姑たちそれらの人たちが皆良い気分にならなかったと思います。ある夜彼に別れたいことを話しました。 小姑影口があまりにひどく、我慢ができず打ち明けました。俺の一番恐れていた事だ、堪忍してくれと男泣きをするのです。驚きもしたけれど後はそのようなことはなかったように思えます。