アポロのタロット占い

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Tarot FILES #6

目の前のカード


私は自分の占いを信じる。当たる、当たらないはともかくとして、その時、その時にめくられたカードが「目の前にある」ということは事実である。私は正直にその事実を言葉にしているに過ぎない。すると、時には自分でも驚くようなことを口にしていることもある。

例えば、こんな話があった。

ある40過ぎの主婦からの相談である。旦那はそこそこの稼ぎで健在。小学生くらいの娘も元気に育ち、何不自由なく暮らしている。贅沢ができるほどでもないが、生活に困るほどでもない。ところが、奥さんは泣いていた。老後のことが不安で、毎日のように涙が止まらないというのであった。アメリカでは日本の国民年金のような老後のための保険制度がない。老後の備えは自分自身でしなければならないらしい。確かに老後のことで不安を抱くアメリカ在住の人々は多いだろう。そこで、そんなに不安ならば未来をカードに示してもらおうということで、私は奥さんの未来を1年単位で調べていった。すると、5年後にきて、そこには、死を意味するカードが出ていた。私は何のためらいもなく、こう言った。

「あなたは、5年後に死にますよ」

わらにもすがる思いで相談した占い師に死の宣告をされた奥さんはどうなったか。なんと、奥さんは泣いて喜んだのである。なぜなら、5年後に死ねるのなら、老後の心配をしなくてすむからである。

この私の予言が正しいかどうかはわからない。しかし、不安の涙を喜びの涙に変えることはできた。そして、少なくとも奥さんの、今後5年間は、不安におびえる日々から解放され、残された余生を無駄遣いしないように、“生きる”ことを目的としたものとなるであろう。

私は信じている。奥さんが5年後には、“生きる”ということが、どれほど幸せで喜ばしいことかということを理解してくれていることを。

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© 1997 アポロのタロット占い


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