アポロのタロット占い

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Tarot FILES #87

こどもの日 - The Sun

2006-05-05T05:05:05+09:00

先日、一人で花見に出かけてまいりました。自転車をこいで、地元の桜の名所、高遠まで行ってみたのです。私は人込みというのが苦手なので、花見もあまり好きではなかったし、意外と遠くて、途中で引き返したくもなりましたが、どうしてもこの目で見ておきたかったのです。年に一度、この瞬間にいっせいに咲き誇る桜の輝きを。やっとの思いでたどり着き、やや満開を過ぎ、散りかけてはいましたが、無事桜を見ることができました。平日の昼間だったせいもあり、幸い人も少なく、たこ焼きを買って、のんびりとベンチに座って食べてきました。

正直、花の美しさがどうこう言うほどのものでもありません。桜は桜。ただそれだけを感じて帰ってきただけでした。写真を撮ってみたものの、ありきたりな絵にしかならず、わざわざ自分のサイトで公開するほどのものではありません。美しい桜の写真なら、他のサイトでいくらでも公開されています。

桜は桜・・・ただそれだけを感じた。しかし、ただそれだけのことでさえ、その場にいなければ感じることのできないものです。いかにコンピューターやインターネットの技術が進歩しようとも、どうしても伝えられないものがある。むしろ、画像や映像、音声などが鮮明になればなるほど、視覚や聴覚に頼る感覚ばかりに意識が集中してしまい、魂そのもので感じるようなものはますます感じられなくなってしまう。だから、私はどうしてもそこへ行きたかった。自分の足で自転車をこいで、そこにたどり着いてみたかった。

現代の人たちは、インターネットのように、膨大な情報をいつでも自由に利用できる環境を手に入れました。知らないことは何もない、何でも知っているような錯覚に陥ります。そして、何かが欠けている事に気づかなくなってしまう。パソコンの画面上の情報がこの世界の全てだと感じ始める。しかし、あなたは、そこにいない・・・。


花見の帰り道、自転車を走らせていると、突然道の反対側から声がしました。

こんにちは~!

驚いてそちらを見ると、子供の姿が見えます。向こうもこちらを見て、おじぎをしました。私は地元(高遠)の人間ではないし、その子供と知り合いだったわけでもありません。人にあったら挨拶をする。その当たり前のことを、その子供は、ごく自然に行ったに過ぎなかったのです。私も、「こんにちは」と返して、走り去りました。とても、不思議な気分でした。うれしくて、自然に笑顔になっていました。

ああ、花見に来てよかったなと、こころから思いました。

高遠の桜の美しさは、こんな素直な子供たちを育てることのできる、そこに住む人々のこころの美しさの現われなのかもしれない。そんな気がしました。

こんにちはありがとうごめんなさいおめでとう・・・。

そんな言葉には情報としての価値は何ひとつありません。コンピューターの世界にはまったく不要な、単なる文字列に過ぎないでしょう。でも、人と人との間にはなくてはならない言葉です。今、インターネット上では、メールやチャットでのコミュニケーションでも、そういった言葉が言えなくなっている人たちが増えています。ネットの向こうに、自分と同じ「こころ」を持った人間がいるということを、「感じられなくなっている」からではないでしょうか。

こころを見失った大人たちが親となったとき、子供たちにいったい何を教えられるでしょう。「しつけ」として、「挨拶をしなさい」、「お礼をいいなさい」といった情報を教え込むことはできても、たぶん、それは何の意味も成さないでしょう。コンピューターで処理できる情報ばかりが溢れる世界はむなしいだけです。そんなむなしい世界に、子供たちを送り出したくはありません。

タロットカード: XIX 太陽

自分の足で歩き、日差しを浴び、風の匂いをかぎ、手で触れ、人と会ったら挨拶をして、握手をして、抱き合う。体全体で、そして、魂そのもので感じる。そうやって、世界を感じるのです。そして、人が人であることを思い出すでしょう。

子供たちを、抱きしめてあげてください。

桜は桜、私は私・・・。

私たちは、いつまで、美しい花を咲かせることができるでしょう。


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