Tarot FILES #2-6


 「宗教が、人々の平和を願うものならば・・・・宗教に従う人々は決して争いなどしないだろう。」

 イエスの言葉がどうにかオレを支えていた。「私は、剣をもたらすために来た」とイエスは言った。

 「同級会のとき、みんなの態度を見て、ハッサはどう思った? 『どうせ学生なんてのは・・・』とか、『社会のルールを知らない』とか思ってただろ。確かにその通りかもしれないけど、それでハッサは一人ですねててどうする?」

 オレは宗教を持たないことで自由でいられた。心を悪に染めて、ハッサを惑わすことも許されている。少しずつハッサの気に障るような言葉で責める。

 「どうしてみんなと一緒に楽しもうとしなかったんだ?ハッサがすねてたら、みんなも気分が悪くなっちゃうよな。ハッサは、同級会の楽しい雰囲気を壊しかけたんだよ。そんなことが許されるのかな、ハッサの信ずる宗教では。」

 ハッサは必ず反論した。オレは疑問をぶつけ、ハッサは反論する。いつまでたっても意見がかみ合うことはなかった。オレは冷静に、ハッサの矛盾を見抜き、ハッサを混乱させていたからだ。この問答を繰り返しているうちに、ハッサは少しずつ興奮してゆき、とうとう熱くなって怒鳴り出した。オレは相変わらず落ち着いた口調で言う。

 「どうして、そう熱くなる? そうやってオレの考え方をハッサの意見に従わせようとしているんだろ。」

 「違う!」

 「争いとは何か? それは、自分の思い通りに相手をねじ伏せようとすることじゃないのか?」

 「そうじゃないんだ1」

 「少なくとも、今のオレは、ハッサの口調に圧倒され傷ついている。」

 「そんなことはない!」

 「ハッサにオレの心を感じることができるのか? 今、オレはかなり苦しい思いをしている。これは事実だ。歴史に刻まれるべき、動かしようのない事実だ。理想など、事実を前にしては何の意味も成さなくなることを学べ。今、この二人の間に何が起こった? オレとハッサは、今、争っているんだ。戦争をしているんだよ。」

 「争ってなんて・・・」

 「ハッサは、争い、罪を犯してしまったんだよ。少なくとも、今ここに平和はない。こんな小さな平和さえまもれなくて、どうやって世界を平和にすることができるんだ?」

 「それなら、イモチャには何ができるっていうんだ? 何もできやしない。アメリカへ行って何をするっていうんだ?」


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