その夜、綺羅と伊里座はサスイ村の長の家に一泊する事となった。
村特有の静かな夜が更けていく。
しかし、その静寂を破るかのように、北からの冷たい突風が吹き荒れ、女性の悲鳴が響いた。
「綺羅、外へ」
綺羅と伊里座は長の家の扉を勢い良く開く。
強い冷風に綺羅達の髪や服がなびく、そしてその体に突き刺さる冷気。
家や木々、辺りを一面を包み込み、世界は凍りついたように白く色あせていく。

「こ、これは・・・」
綺羅と伊里座の口から白い息がこぼれる。
その時、村の男達が武器を片手に集まり、口々に叫んでいる。

「彩羽が俺達に復讐しているんだ!」
「俺達を氷・・・殺そうとしている!」
「やられる前に・・・!!!」

綺羅と伊里座が止める間もなく男達は北の泉がある方向へ走りだした。
「綺羅、私達は村にこれ以上冷気が入り込まないように防御幕を張り、彼らの後を追いましょう」
「はい、伊里座」
強い冷風が吹き荒れるなか、綺羅と伊里座は北側の村の入口まで進む。
そして、凍り続ける村の家々を見つめ、両手をかざした。
「負の力、幕を作りし我等を守る者となれ!・・・カウンター・マジック!!」
彼らの前に透明な幕が生まれる。
その幕は村全体を包み込み、そこから先には冷気が進むことは無かった。
「さぁ、彼らの後を追いましょう」


ツギヘ



ヤメル