綺羅と伊里座は、次の日に伊里座が唱えた瞬間移動でイオスに跳んだ。

イオスは別名「風の都」とも呼ばれていた。
絶えず吹き続けるユラン平原の西風は、ルノール山脈の懐に栄えたイオスに優しい南風を送り続ける。
綺羅と伊里座は少し高く出来た門をくぐりイオスの街並みを歩く。
大通りの左右にある商店には武器や防具が所狭しと置かれ、
見たこともない不思議な剣や鎧なども並べられていた。
「この都は、武器と防具商に栄えた街です。
ティア大陸の聖国や都から多くの武器屋や防具屋がやってきて商売をします。
イオスで手に入らない武器や防具は無いと言われるほどの数多くの種類が集められています」
伊里座は綺羅に呟いた。

その時、一陣の強い北風がイオスの街並みを通り過ぎる。

商店街の中ではあちらこちらから悲鳴が聞こえ、服や布、食べ物等が勢い良く空に舞い上がる。
「・・・この風は・・・?」
服を抑えながら空を仰ぐ綺羅に、近くに武器屋を開いている40代の男が倒れた剣を立て直しながら答えた。
「最近、よく吹く北風さ。ユラン平原でから運ばれる南風で北風が吹くことさえ珍しいのに、
時折氷の様な冷たい北風が吹きやがる。一体どうなっちまっているのか」
「この北風はいつから発生しているのですか?」
伊里座は髪を整えながら問いかけた。
「2、3ヶ月前からさ。北に魔物が住みだしたんじゃないかっていう噂だぜ」
「2、3ヶ月前からですか・・・」

綺羅と伊里座はイオスでの食料、薬草などの調達も程々にイオスから北に位置するサスイ村へ歩き出した。


ツギヘ



ヤメル