サスイ村はルノール山脈の山沿いに面した林の中にあった。
人口も50人ほどと少なく、木立の間に点々と家が建っている。
村の中心には小さな広場があり、子供達が楽しそうに走り回っていた。
「村の長に話しをお伺いしましょう」
伊里座は村に到着するなり、近くを歩いていた男性に村長の家の場所を聞き、家へと足早に歩き出した。
綺羅は伊里座の後を追うように歩いていく。
途中、大人達の噂する声が耳に聞こえる。

「・・・耳・・」
「・・・・・とがった耳」
「・・・人間じゃ・・・ない」

大人達は伊里座をまるで魔族の様に警戒し、鋭い瞳で見つめる。
子供達は大人に連れて行かれ、伊里座と綺羅から逃げる様に家の中へと入れられていく。
「・・・綺羅、村人達の声が聞こえますね」
伊里座は視線を綺羅に向ける事無く、呟いた。
「・・・はい」
綺羅はゆっくりと頷いた。

サスイ村の一番奥に長の住む家があった。
伊里座は扉をゆっくりと2回ノックする。
暫くすると、少し年老いた男が姿を現した。
「お待ちしておりました・・・法の塔の方々」
老いた男は深々と頭を下げた。


ツギヘ



ヤメル