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「この村に以前、若い占い師が住んでおりました。数年前に村の近くで記憶を失い倒れていた女性です」 老いた男は湯気の立つ飲み物を伊里座達の前に、ぞして自分の前にも置きながら、話を続ける。 「殆どの記憶を失っていたにも関わらず、彼女の言葉は全て真実を語っていました。 占った全てが彼女の言葉通りでした」 男は伊里座と綺羅の前に座る。 「・・・あまりにも真実を語り過ぎたのです。・・・次第に村人達は彼女を異物と考え、 彼女も逃げるように村から姿を消しました。 その時からです。普段吹く事がない北からの冷気の風が吹く様になったのは」 「・・・今、その女性は何処へいるのですか?」 綺羅の問いに男はゆっくりと呟く。 「・・・この村の北にある泉の側に住んでいます」 男は少し、飲み物を口に付けた。そして話を続ける。 「彼女を助けて上げて下さい・・・ 今でもこの村の近くに住み続けているという事は、記憶が戻ったとは思えません。 記憶の無い彼女が戻れるのはここだけなのだから。・・・それに、村人達は彼女が姿を消してから、 閉鎖的になり村以外の人間を警戒するようになりました。 ・・・ここへ来てお感じになったでしょう・・・特に貴方の様に外見的に違いがある者には強い警戒心を抱く」 老いた男は伊里座の優しく光を反射する白金色の髪から見え隠れする少し伸びた耳を見つめた。 「今の状態から全てを変えるにはあなた達の力が必要なのです」 その視線に伊里座は金と淡い青の瞳で少し哀しく微笑んだ。 そして伊里座はゆっくりと立ち上がる。 「明日、その彼女に逢いに行ってみましょう」 逢イニ行ク 逢イニ行カナイ |