|
数学教師、沢村由樹はオレンジ色に染まった校舎の廊下をある場所に向かってゆっくりと歩いていた。
「・・・はぁ。」
大きなため息をついて、沢村は足を止めた。
そして、窓ガラスに映る自分の姿を見つめた。
脳裏には先ほど職員室で聞いた話が浮かび上がる。
「学生代表会議・・・ですか?」
「そうそう、学生会の各委員代表者だけで行う会議。沢村先生が職員室にいないときに、日下部くんが
来てね。『緊急の代表会議を行うので来て欲しい』との事だよ」
「・・・緊急?ですか」
「日下部くんも何か急いでいたみたいだし、あの学生会が緊急招集をかけるなんて前代未聞な事だぞ」
「そう、ですか」
教員は沢村の方へ一歩踏み出す。
「それにしても沢村先生はラッキーだね。新任で学生会の顧問になって、しかも、早々に学生代表会議が
見られる。知ってますか?代表会議は別名円卓会議とも言われているんだよ。学生会にある丸い大きな
テーブルで会議をしている姿が、まるでアーサー王と円卓の騎士の様に見えるそうだ。いや〜、
うらやましい」
窓ガラスに自分の姿が映る。
外はオレンジ色からゆっくりと色を落としていく。
「・・・円卓会議・・・ねぇ。教師が学生達に憧れてどうするんだよ」
沢村は再びゆっくりと歩き出した。
そして、小さく呟く。
「・・・まぁ、確かに格好いいと思う事はないでもないけど・・・」
「・・・それって誰の事?」
「うわぁっ!」
沢村の目の前には突然現れたイチハの姿があった。
イチハは沢村の大きな声に、ため息混じりに目を細める。
「僕の顔を見て大声あげるなんて・・・・ちょっと失礼なんじゃない? 沢村先生」
白く透き通るような肌
その肌には体温を感じる事が出来ない
そして、細身の体はフワフワと宙に浮いている
「突然目の前に現れたら、誰だって驚くだろっ」
その言葉にイチハはスッと沢村に顔を近づけ、にっこりと笑みを浮かべる。
「じゃあ、次はもう少し雰囲気を作って出ることにするよ」
「・・・遠慮しておきます」
|