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「全く・・・」
4月から教師となった沢村由樹は大きく伸びをしながら、学校の廊下をゆっくりと歩いている。
夕暮れ近い学校には人の気配もなく静まり返り、オレンジ色の太陽が校舎、グラウンドを静かに照らしていた。
グラウンドにはサッカー部が試合をしている。
その周りには沢山の応援と黄色い歓声の生徒達。
優しい太陽の光が全てを包み込んでいた。
沢村もその優しい太陽の光を浴びながら、廊下をゆっくりと体育館へ向かって歩いていた。
「やっぱ、徹夜は辛いなぁ・・・」
再び沢村は大きく伸びをする。
「あいつら、夜中に突然学校に呼び出したかと思えば、「彼の話し相手になって欲しい」なんて・・・、
まぁ、話を聞いてあげるだけで、彼は旅立ったからよかったけど」
そう呟きながら、到着した体育館の鉄の扉をゆっくりと開ける。
大きな音と共に開いたその先は、オレンジ色の陽の光が入ることがない薄暗い大きな空間が広がっている。
沢村は薄暗い体育館の扉や窓硝子に閉め忘れがないか、ゆっくりと確認を始めた。
「・・・よし、これで見回りチェックは終わり」
手に持っていたノートへ赤いボールペンで最後の項目にあった体育館にチェックを入れる。
そして、職員室へ帰ろうと足を動かした瞬間、
ポンッ・・・
目の端に何かが通り過ぎた。
「・・・何?」
視線を動かす。
そこには転々と転がっていく白と黒のボール。
「・・・サッカー・・・ボール?」
外で使用するはずのサッカーボールが風もない体育館の中で、バウンドしながら転がっている。
そして、その白と黒のボールは次第に沢村の方へ近づいてきた。
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