□ scene1 □


「ねぇ、今から何処へ行くの?」

黒く美しい髪。
サングラスで隠した大きな瞳。
ニットの帽子を深く被っても気づかれてしまう日本人離れした端正な顔立ち。
近くの街頭の巨大スクリーンからは今人気上昇中のバンド「snow jewel」の
幻想的な映像が流れ、信号待ちの人々の視線を集めている。

若者はネオンが輝く雑踏をまとわりつく男達から逃げるように足早に歩く。

「ねぇ、ねぇ。無視しないでさぁ」

一人の男がコンビニのビニール袋を持っている事に気付く。

「コンビニの帰り? 一人暮らしなの?」
「一人暮らしなんて危ないじゃん。 俺達が家まで送ってやるよ」
「それとも、俺達と一緒にカラオケでもどう?」

その言葉に若者は歩いている足を止めた。
そして、まとわりついている男達に振り向き、サングラス越しに睨み付ける。

「・・・いい加減にしろっ」

その声に男達は唖然とした。
若者の後ろのビルに設置されている巨大スクリーンには「snow jewel」の
ボーカル、ユキの日本人離れした端正な顔がアップで映し出され、美しく怪しげな赤い瞳が
通行客の視線を捕らえて離さない。

「なんだよ・・・・男じゃねぇか」
「あれ? こいつ、snow jewelのボーカルじゃねぇ?」
「ボーカルの・・・ユキ?」
「お、おい写真っ、写真撮れっ」

その時、ユキ後ろからパチパチと手を叩くが聞こえる。

「はいはい、そこまで」

その言葉にユキが振り向く。
そして、安心したかのように呟いた。

「・・・神矢」

「俺達の大切なボーカルに何か用?」

ユキの後ろには3人の男が立っている。

「悪いけど、僕達今から大切な用があるから」
「ミヅキ」

「って事で、頂いていくよ」

言葉と同時にユキの体がフワリと3人の方へ引き寄せられる。

「ヒサト・・・」

唖然としている男達を後目にユキを囲むようにしながら、後ろのビルの中へと入っていった。

 

-scene2-

-back-