□ 黒栖6 □


その瞬間、螺夜は初めて困惑した表情を浮かべた。

「・・・黒栖、お前とは傷つけ合いたくない。・・・黒栖」
螺夜は黒栖をじっと見つめる。

「・・・いや、闇華(エンカ)」

闇華と呼ばれた瞬間、黒栖の体は硬直し、握られていた螺夜の銀の髪が黒栖の手からこぼれ落ちる。
そして、綺羅と伏見を囲った四角い空間は硝子が割れて崩れるように消え始める。
黒栖は硬直した体を無理矢理に動かし苦しそうに呟く。
「・・・螺夜が・・・俺の名を口にするとは・・・それほど・・あの人間が・・」
螺夜は氷と紅の瞳で黒栖を見つめる。
そして、ゆっくりと瞳を伏せた。
「・・・黒栖。カラツの村人にかけた暗号を」
黒栖は「黒栖」と名を呼ばれ、ようやく動き出した体を少しずつ動かしながら呟いた。
「・・・螺夜、お前の名前だよ。俺とお前だけが知っている真実の名だ」

その瞬間、黒栖は何かを感じ、動きを止める。
「・・・この空間に無理矢理入り込んで来たヤツがいる。それも俺の嫌いなヤツの気配だ」
黒栖が見つめる先の空間に小さな亀裂が出来る。
その亀裂は勢い良く広がり、空間の壁の一部が崩れた。
そして、その中から何人もの男達がゆっくりと闇の空間へ入り込んできた。

「・・・何だ・・・あいつら・・・?」

伏見はその男達の姿をじっと見つめながら呟いた。
男達は角がある者、耳が異様に長い者、翼を持つ者、不思議な姿をしている。
その中に異様な程、邪悪な気配を感じる。
「・・・嫌な気配だ。黒栖の時よりも・・・」
伏見は魔封じの剣「冴威」をそっと抜き、綺羅に呟いた。

「・・・・・つッ」

今までに聞いた事が無い苦しそうな綺羅の声に、伏見は綺羅の方へ振り向く。
綺羅は額を手で押さえながら苦しみに顔を歪ませ、うずくまっている。
「・・・綺羅?どうしたんだ?・・・どこかが痛むのか?」
伏見は額を抑える綺羅の手をそっと動かした。
綺羅の額にある赤い三角形の印はヒビが入り崩れかけていた。

 

-封印1-

-黒栖5-

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