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黒栖は嬉しそうに瞳を細める。
「これで、ゆっくり話せるだろう」
螺夜はその冷たい氷の様な瞳で黒栖を睨み付ける。
「何故、襲った?人族は興味がないと言っていただろう。魔族の中で最高位にいる貴族のお前が」
「人族など興味はない。魔族も同じだ」
黒栖は螺夜へゆっくりと近づく。
「俺と同じ地位にあるお前が、俺に何も言わず魔界から突然姿を消したからだ」
腕を組んだままの螺夜の髪に黒栖はゆっくりと手を伸ばす。
「見つけたお前は人界に行き、気配まで隠して人間達となれ合っていた。・・・そう、今まではそう思っていた。
・・・あの封印の護り手として人界にいるのならば・・・壊してしまえばいい」
黒栖は螺夜の銀の髪を自分に引き付ける。
「あのまま、あの空間をどこかの闇へ落としてしまえば護り手は必要ない」
黒栖は冷ややかな笑みを浮かべる。
螺夜は黒栖のその紅い瞳を見つめていたが、俯くように視線を外す。
「黒栖、私は・・・」
螺夜を取り巻いている空気が微かに蠢く。
その蠢きは次第に巨大な力の風へ変わり螺夜の銀糸の様な美しい髪を靡かせ、黒栖の短い紅の髪も舞い上がる。
「この闇の空間で俺に挑むつもりか」
黒栖は手の中に握られたままの螺夜の美しい髪を再び自分の方へ引き付けた。
そして、螺夜に向かい鮮やかな紅の瞳を細める。
「あの人間達を護るために?」
螺夜は氷の瞳で黒栖を見つめる。
黒栖は螺夜の瞳を見つめながら、右手の指でパチンと指を鳴らした。
その瞬間、螺夜から生まれていた巨大な風が一瞬にして消え、変わりに黒栖の周りから少しずつ空気が歪み始める。
「この空間では俺に勝る事など出来ない。分かっているだろ?螺夜。それに・・・」
黒栖は綺羅と伏見の方を見つめる。
伏見は透明な板を手で叩き、何かを叫んでいる。
しかし、その声は二人を被う透明な四角い箱に阻まれ、螺夜達に声が届くことは無かった。
「・・・あの封印。もし、人間ごと封印を暗闇へ堕とした場合、魔界の力を受けた封印がどの様に変化するのか・・・見せてもらおう」
黒栖の紅の瞳は歪んだ空気に触れて、一層鮮やかに映る。
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