□ prologue □


それは、昔むかしの物語



暗闇に足音が響く。

石畳の霧がかった道を女が一人歩いていた。
石とレンガで出来た無機質の建築物には、先ほどまで残っていた最後のランプの明かりも消え、
女の手にあるランプの明かりだけが壁に影を造っていた。
女の足は取り速く、ある一点の場所を見つめたまま後ろを振り向くこともなく歩いていた。
女の視線の先には微かな光でも反射する様な大きな十字架が見える。

「・・・教会に・・・着けば・・・・朝にさえなれば・・・・・。」

女が呟く。
しかし、その声は深く濃くなり続ける霧に飲み込まれていく様だった。
教会まで残り数百メートルの所まで来たところで、初めて女は後方に異様な気配がある事に気がついた。
女は初めて立ち止まり振り向いた。
霧の中、白く深い闇の中から蹄の音もなく二頭の馬が現れた。
その馬達は一つの黒色をした車を引いていた。
車輪の音、馬の息遣いすら聞こえない無音の中で、馬車は女の前で静かに止まった。
女はその迫りくる恐怖に震えながら身動き一つも出来ず馬車の黒い扉を見つめていた。
「・・・・何、何か私に・・・用・・ですか?」

女の声が震える・・・・・。

その言葉に返すように馬車の扉が音もなく開いた。
その中から黒い手袋をした黒いスーツの男の腕が女に伸びる。
その瞬間、女の瞳からは光が消え、右手に持っていたランプが道に転がった。

女は姿を消してから三日後、街の郊外で倒れている所を発見された。

 

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