その塔は「法の塔」と呼ばれていた。

ティア大陸の西南、サエル湖に面した螺旋状の塔は周囲4つの小さな塔と4つの塔を繋ぐ壁に囲まれ、
その巨大さから「法国」とも呼ばれていた。
法の塔の中心にある螺旋状の巨大な塔は、東に「魔術師の塔」、西に「法術師の塔」に分かれており、
重なる事で形成されていた。
綺羅は魔術師の塔にある一室の窓から外を見つめていた。
綺羅の紫色の瞳に写るモノは、サエル湖に写る満点の星と空の月、そして対岸に栄える湖の都メーロスの光。
湖に光が反射してキラキラと輝いている。
「なぁ、綺羅」
伏見はベットに体を横たえながら呟く。
「噂には聞いていたが、あれほどの力を持つ者達が暮らしているとは思わなかった。
遊佐や伊里座達、師と呼ばれる者達はどんな修行を積んでいたのか・・・」
伏見の言葉に綺羅は振り向いた。
「彼らの様な師になる人々は、生まれながら師になるための素質を持っています。
彼らとその近くにいる方々は、私達とは異なった時間を生き、
それはまるで若木が年輪を重ね大木になる様に・・・ゆっくりと時間が過ぎて行くのです。
そして・・・永い時間が過ぎ、やがて彼らは力を失っていきます。
全ての力を失う時、新しい担い手が現れ、塔を守る役目を担います。」
綺羅はその紫色の瞳を細め、にっこりと微笑んだ。

「・・・少し、昔話をお話しましょうか・・・?」


聞キタイ
聞キタクナイ



ヤメル