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「エンジェルを・・・守らなければ・・・」
床を這う様な形でナイトはうずくまる。
口の周りには真紅の血がつき、小さな咳をするたびに口から大量の血を吐いている。
突き上がりがナイトを照らし、白い肌を青白く照らしていた。
ナイトは血の付いた手をソファーに延ばす。
「エン・・・ジェル・・・」
部屋の中が一瞬明るくなり、ユリアス達が姿を現した。
ナイトはソファーの足の部分を背もたれ代わりにしユリアスを睨み付ける。
「貴様等・・・エンジェルを離せっっ」
荒く息遣いを続けるナイトはユリアスを睨み続けながら右手をユリアスへ向ける。
「離さないのなら先ほどの様に攻撃をする。次は怪我だけでは済ませない」
「兄さんっっ止めてっっ」
いつの間にかシキから降りたエンジェルがユリアスの前に出るのとナイトが攻撃に出たのは殆ど同時であった。
「ダメだっ、エンジェルッッ」
エンジェルはユリアスの前に立ち目を強く閉じる。
しかし、ナイトの衝撃波はエンジェルの届くことは無かった。
エンジェルはゆっくりと瞳を開ける。
エンジェルとユリアスの前には片手でナイトの衝撃波を受け止めるシキの姿があった。
ユリアスはシキに怪我が無いことを目で確認すると、ナイトへ振り向いた。
「ナイトさん。あなたを助けに来ました」
「・・・助け?」
エンジェルがナイトに近寄り、助け起こそうとナイトの腕を抱く。
「私がこの人達に助けを求めたの。この方達なら兄さんを助けることが出来る。・・・私という足枷もいつかは無くなり、自由に飛べる時が来る」
ナイトは荒く息を吐きながらも笑みを浮かべる。
「母が亡くなる直前、私に言った。追われている理由を・・・エンジェルの背中の翼はクローン再生時の偶然の産物でも何も無い・・・」
ナイトは再び激しく咳き込み、同時に背中を抱くように両手を回す。
白いシャツの背中から真っ赤な色が浮かび上がり、背中も異様なほど膨らみ始める。
「・・・ナイト・・・兄さん?」
「私達は短命種なんだよ。父も母もこの大気では長く生きられない種だったんだ」
エンジェルはナイトから一歩後ずさり手で口を押さえる。
「・・・兄さん・・・」
ナイトの背中から純白な翼が服を破り姿を現した。
「私達は有翼人種だったんだ」
ナイトはゆっくりと立ち上がりエンジェルのいる方向へ一歩、また一歩と足を動かし、弱々しい腕をエンジェルへ差し延べる。
しかし、その腕はエンジェルには届かず、何かを掴むような形で手を動かし倒れていく。
そして、純白な翼は大きく一度羽ばたかせるが、再びナイトを立ち上がらせる事は無かった。
「・・・兄さんっっ」
エンジェルは涙を流しながら床へ倒れたナイトにしがみつく。
「エンジェル・・・ごめん。最期まで守ることが出来なかった・・・」
ナイトはその言葉だけを言うと、大気に溶けるかのように姿を消していった。
エンジェルは自分の両手を見ながら泣き叫ぶ。
「私は・・・兄さんが側にいてくれるだけで幸せだったの。兄さんを失ってしまったら私はどうすれば良いの?・・・・どうすれば・・・」
ユリアスはエンジェルを背後からそっと抱き耳元で呟いた。
「渡したクリスタルは持っているよね」
エンジェルは振り向くこともなく泣きながらうなずいた。
ユリアスはエンジェルがうなずいた事を確認すると、エンジェルから離れ大きく呼吸をする。そして、クリスタルを両手に持ちゆっくりと瞳を閉じた。
次第にユリアスの体から光の粉のような物があふれ出す。
「ユリアス・・・何を」
ユリアスの持つクリスタルから一本の光の線が夜空へ延びる。ユリアスの体は自然に本来の姿へと戻り、黒い髪の間から白い羽根が見える。
開いた瞳もブラックからシルバーへと色を変えていた。
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