□ scene1 □


「暑いな・・・まだ7月だって言うのに・・・」
そう言いながら、ユリアスは背中の中頃まで延びているストレートの黒髪を頭の後ろで一つにまとめながら黒とアメジストの瞳で空を見上げた。
「館まで、この歩道橋を渡ってしまえば、あと少しですよ」
シキは手にフランスパンが顔をのぞかせている紙袋を持ちながら、アクアブルーとアイスグリーンの瞳を細める。
シキの腰まで伸びている髪は軽く三つ編みをされているものの、それほど暑そうでもなく歩き続けている。
2人は歩道橋の階段を登りきったところで、橋のほぼ中央あたりに座る少年の姿にはっとした。
見た目17.8歳の少年は、歩道橋の手すりに腰をかけ、下に通る切れることのない車の波を見つめていた。
「・・・ユリアス。この荷物をお願いします」
シキはユリアスに紙袋を渡し、少年に近づいていった。

その瞬間、少年は手すりから舞い降りるように車道へ飛び降りた。

「いけません。こんな所から・・・」
そう言いながら、シキは落ちそうな少年の体を両手で支え、手すりへ戻した。
少年はシキを睨み付け、息を弾ませながら叫んだ。
「俺を止めるなっっ、今なら死ねたかも知れなかったのにっっ」
少年は激しく息を弾ませていたが、急にシキに向かって苦しそうに倒れ込んだ。
シキは支えながら、少年の額に手で触れる。
「・・・熱があるようです」
「シキ、この人を館へ連れていこう」
「えぇ」

 

-scene2-

-prologue-

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