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「シキ、お前はルシェルランス様と共に星から抜け出しなさい」
氷は全てを飲み込んでいく・・・街を、木々を、人々を・・・その中で残るのは王宮だけとなっていた。
その王宮も徐々に凍り付いていく。
その中の一室でルイは朱色と紫色の瞳を細めた。
「氷の進行が思ったより速かった。一日も経てば私達全てを飲み込んで氷だけの世界になる。
創師達の船も間に合わず氷付いた。星から抜け出す唯一の船は二人乗りの小さな船だ」
「私・・・はいけません。兄さんを残して助かるなどは出来ません」
ルイはうつむくシキの頭をそっと撫でる。
「王は女王と共に星の最期を見守るおつもりだ。私は現王の最期を見守る義務がある・・・
シキ、これは王と女王の希望なんだよ「世継ぎの王とその付き人シキを」と」
氷の冷気がスッと通り過ぎる。
「シキ、ルシェルランス様を頼む」
シキはルイにしっかりと抱きついた。
「・・・・はい、ルイ兄さん」
「早くお行きなさい・・・氷に捕まってしまう前に・・・」
冷気に包まれた王宮の中に女王と王、そしてルイが佇んでいた。
その体は氷が胸の位置まで包み、少しずつ上へと被っていく。
女王へ必死に手を延ばそうとするルシェルランス。
それを止めるシキ。
氷に包まれた王宮の中、ルシェルランスの声が響く。
「しかしっっ母上っっ!」
女王はその青と紫の瞳からこぼれる涙を拭こうともせず微笑んでいる。
シキはルシェルランスを止めながらもルイを見つめていた。
ルイは朱色と紫色の瞳を細め、ゆっくりとうなずいた。
「・・・ルシェルランスを・・・いえ、ユリアスを頼みます・・・シキ」
その声にシキは女王の方へ向き、ゆっくりとうなずいた。
「かしこまりました・・・女王」
そして、氷と共に生きてきた世界はユリアスとシキだけを残し氷に包まれた。
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