|
「哲也さん。この水晶玉に手をかざし、ツヤ子さんを思い浮かべてください」
哲也がユリアスの言葉に従うのを見ると、ユリアスも同じように瞳を伏せ水晶玉に手をかざした。
ユリアスの脳裏にツヤ子の姿がゆっくりと浮かび上がる。
背後には砂浜と青い海。水平線が分からなくなるような青い空も続いていた。
海から来る柔らかな風に長い黒髪が揺れ、輝くばかりの笑みをこちらへ向けている。
遠くの方から響き逢う微かな声も聞こえる。
「半年後に逢いましょう。お互いにけじめを付けるために。お互いの家族が幸せになるために、どこからも見える場所で・・・そう、東京タワーが良いわ」
「もし、相手が来なかった場合は?」
「事情の許す限り、必ず・・・」
少しずつ世界が明るくなり一瞬大きく輝いたと思うと、先ほどまでいた世界とは違い正面に東京タワーが見える。
周りはいつの間にか暗くなり、東京タワーはオレンジ色のライトを形取っていた。
「あと、少し。後少しであなたに逢えるわ・・・」
東京タワーに続くまっすくな道を走る。息遣いが聞こえる。
左手の赤い手袋と、赤い袖の間から腕時計が見え隠れする。その針は5時を少し回っていた。
東京タワーが目の前に近づき視線が大展望台へ動く。
その時であった。
ふたつの鋭い光に目がくらんだ瞬間。
目の前にあるオレンジの光は真赤な血色に染まっていった。
「ユリアスっ大丈夫ですか?」
ゆっくり目を開くと、ユリアスはシキに抱きかかえられるような形で横になっていた。
倒れたはずみでマントのフードが露わになる。耳元へ繋がる飾りが露わになる。
「ありがとう、大丈夫だよ」
座っていたはずの椅子も同じように横に転がっており、哲也が近くで心配そうにのぞいている。
「・・・椅子から落ちたんだ・・・」
シキに支えて貰いながら起き上がる。
そして、ゆっくりと哲也に向かい話を始めた。
「ツヤ子さんは東京タワーに行きたくとも行けなかったのかも知れません」
「行きたくとも行けない・・・?」
「・・・えぇ・・・・きっと・・・。ツヤ子さんにはあなたの中で逢うことが出来ましたので求める事もそれほど難しい事も無いと思います」
ユリアスは哲也に向かいにっこりと微笑み話を続ける。
「哲也さん・・・ツヤ子さんを愛していますか?」
哲也はゆっくりと頷く。
「えぇ、もちろんです」
「何があっても・・・」
「・・・・何があっても」
安心したように微笑む。
「一週間、時間をください」
|