□ scene2 □


ユリアスは黒いフードをゆっくりと外す。
背中まであるストレートの黒髪が揺れ、頭に付けている飾りも輝きを増した。
ユリアスは小さなため息を付きながら、黒と紫の瞳を伏せた。

「・・・アイ・・・タイ・・・」

先ほど聞いた中世的な不思議な声が、はっきりと聞こえてくる。
「貴方は誰に逢いたがっているの?」
誰もいない部屋にユリアス声だけが響く。
「僕に何を問いかけているの?」
「ユリアス」
その落ち着いた声にユリアスは少し驚きながら入口の扉の方向へ振り向いた。
そして、声の主を見つけ安心したように微笑む。
「シキ・・・」
黒い細身のスーツを着たシキ・クランドルは黒く長い髪を軽く後ろでしばり、青と緑の瞳を細め笑みを浮かべる。
「本日はこの方で最後です」
シキは後ろにいるブレザーの学生服を着た男性を前に招いた。
うつむいたまま佇む若者に、ユリアスは向かってにっこりと微笑んだ。
「GOD EYESへようこそ。こちらの椅子へお座り下さい」
若者は黙ったままゆっくりとユリアスの前にある椅子へ近づいてくる。
しかし、椅子に手を掛けただけで若者は頭を下げた。
「ごめん、俺、やっぱどうかしている。占いの人に聞くような事じゃない・・・帰ります」
そう言うと、そのまま出口へ走り去って行った。
シキは若者の後ろ姿を見送っていたが、ゆっくりと占いの部屋の扉を閉めた。
「シキ・・・何の香りだろう」
ユリアスはそっと瞳を閉じる。
「先ほどの彼の残り香ですね。しかし香水では無いようです。・・・これは・・・金木犀の香りでしょうか・・・」
「彼に何も無ければ良いのだけど・・・」

その後、声の主も金木犀の香りを持つ彼も現れず、一週間が過ぎ去っていった。

 

-scene3-

-scene1-

-back-