□ scene8 □


甘い金木犀の香りも奥に進むにつれ強くなりむせ返る様な香りに変わって行った。
高志の目の前が急に開け、そこには一本の金木犀が満開の花を付け佇んでいる。
オレンジ色に輝く大樹は、そのオレンジ色の花を全身に付け、黄金に輝いている様にも見えた。

「・・・功っ!」
功は両手首を金木犀の太い幹に食い込むように埋め込まれうつむきながら佇んでいた。
高志はゆっくりと金木犀へ近づく、そして功の頬にそっと触れた。
「功・・・大丈夫か?」
功はその言葉に反応するかのように頭を上げ瞳を開く。
「・・・ヤットアナタニ・・・アエル事ガ出来タ・・・」
高志を見つめる功の瞳は黄金色に輝いている。
その瞳を見つめながら、高志は驚きのあまり、2.3歩後ずさった。
「・・・功・・・じゃない。・・・お前は誰だ?」
「・・・ズットアナタニ信号ヲ送ッテイタノニ・・・気付イテクレナイ・・・大好キナアナタ達ニ・・・」
功の姿を借りたその者は、瞳を閉じながらゆっくりと木の幹の奥へと入り込んで行く。
「・・・功・・・?」
高志は幹の奥へと沈んで行く功を呆然としながら見つめている。
「高志さん、ここは何処か思い出した?」
「・・・そんな事・・・」
ユリアスはゆっくりと高志に近づき、そして、高志の両肩へ手を乗せる。
「教えて下さい。ここは何処ですか?」
高志はふと、金木犀を見上げた。
「思い出した・・・。ここは前に通っていた小学校の裏にある雑木林だ。そこに大きな金木犀があった。 ・・・秋になると金木犀の花が咲き、小学校中その香りが充満していた。僕と功はその金木犀の近くで良く遊んでいた。・・・その金木犀だろう・・・」
奥へ沈んでいく功の進みが止まる。
「一目見て思い出したよ。あの頃、僕達にとって金木犀も大切な友達だった」
功は少しずつ幹から浮き上がるように離れていく。
「・・・アナタ達ニ・・・逢エテ良カッタ・・・大好キナ・・・タカシ・・・コウ・・・大切ナ・・・トモ・・・ダチ・・・」
功は金木犀から抜け出し高志へ倒れ込んだ。
周りの景色が急に歪みだし青々とした木々が消えていく。
そして、金木犀の大樹も目が眩む様な光と共に消えていった。

 

-epilogue-

-scene6-

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