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「シキ、黒髪の方は元気?」
ステージの上を音も立てずに流れるように歩くシキは、その声にはっとし振り向いた。
そこには客席に寄りかかりながら理沙子がにっこりと微笑んでいる。
シキはステージの先の方まで歩き、ゆっくりとターンをする。
「黒髪の・・・方ですか・・・」
シキの髪が静かに揺れる。
「えぇ、いつも一緒に歩いていた人よ。今いるあなたとは別人のような笑みを浮かべながら愛しそうに見つめていた黒髪の方よ」
シキの後ろからケイリーが静かに歩いてくる。
「確か・・・ユリアスという名前だったかしら」
シキは驚いたように目を見張り動かす足を止めた。
その言葉を聞いたケイリーもシキに近づき理沙子を睨み付ける。
「何で、ユリアスのことを知っているんだっっ」
シキはケイリーの前に手を差し出しケイリーを鎮める。
「ユリアスは元気です。近くで占いの館を開いています。良ければおいで下さい」
「そう、是非話がしたいわ。あなたの事やユリアスの事について」
理沙子はにっこりと目を細めた。
しかし、その瞬間、理沙子は苦しそうに地面に座り込む。
「理沙子さん・・・?どうしました?」
シキはステージを降り、苦しそうにうつむく理沙子を見てケイリーに叫んだ。
「ケイリー、救急車を呼んで下さい」
「・・・・だい・・・じょうぶ」
理沙子の微かな声にシキは理沙子の口元へ耳を寄せた。
「・・・大丈夫、すぐに収まるわ」
「しかし、そんなに苦しそうでは・・・」
その瞬間、シキの脳裏にいくつかのビジョンが通り過ぎる。
それは、青い空の中、白い大きな建物、風に揺らぐ白いカーテン、その中で窓の外を見つめる黒髪の女性。
隣を歩くユリアスがぽつりと呟く
-----白城の姫君みたいだね----
風がながれる。ユリアスとシキの長い髪が風の中で踊る。
女性の黒髪も風に揺れる。
それを見ながらユリアスは眩しそうに微笑む。
「・・・・あなたは」
理沙子は苦しくも嬉しそうに笑みを浮かべた。
その時、蹲る理沙子を抱き上げる男性がいた。
「私が彼女を病院へ連れていきますから、シキ達はリハーサルを続けて下さい」
「ジーン」
ジーンは茶色に近い緑の瞳を細めた。
「ショーは明日ですからね。今、あなた達はショーの成功だけを考えて下さい」
そう言い残し、理沙子を抱いたジーンは客席の奥へと消えていった。
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