□ scene7 □


「理沙子は白いベットの上で窓の外を眺めていた。
少し明けた窓から、微かな風が白いカーテンを揺らし、理沙子の長い黒髪を揺らした。
理沙子は小さなため息を付く。
そして、ファッション雑誌のあるページに目を移した。

-----トントン-----

扉をノックする音に理沙子は振り向きもせず答えた。
「どうぞ、開いているわ」
「王子様は見つかった?」
理沙子が驚いたように振り返る。
そこにはカラーの大きな花束を持ったユリアスがにっこりと微笑んでいた。
「初めまして、白城の姫君」
理沙子は手に持っていた雑誌をベットの下へ落とした。
そこにはシキの香水エーゲのモデル写真が写っている。
「・・・覚えていないと思っていたわ」
理沙子は嬉しそうに瞳を細めた。
「歩くあなた達の通り過ぎる風景の一部にしかなれないと思っていた」
ユリアスは理沙子に花束を渡す。
「初めて見たあなたは白い城の中から外を見つめる姫君に見えたんだ。何度も逢っているのに初めて話をするなんて不思議だね」
「週に何度か通り過ぎるあなた達を窓から見つめていたわ。楽しそうにいつも二人で歩いていた。とても輝いて見えたわ。 私もあなた達と一緒に歩きたかった。・・・ふと、姿を見なくなった時、雑誌で彼を見つけたの・・・嬉しかった。 また、あなた達の姿を見ることが出来る。父を説得して「コレクションナウ」のオーナーになったのだけど・・・」
理沙子の頬に涙が伝う。
「理沙子・・・さん?」
「・・・もう、終わり。私の弱い体は耐えることが出来なかった。父と約束をしたのよ、体が持つまで自由にしてもらう。 ・・・明日のコレクションは見ることが出来ない」
シキは理沙子の涙を見ながらユリアスへ呟いた。
「・・・ユリアス・・・」
「うん?・・・うん。シキの思うようにして」
シキはユリアスに向かい一度瞳を伏せると、理沙子に向かって優しく呟く。
「理沙子さん。あなたは明日のコレクションに行くことが出来ます。あなたの足で」
「無理よ、不可能だわ。医者に宣告されたの。もう長く生きることが出来ない命だと」
理沙子は顔を両手で覆い隠した。
「私の運命は変わらないわ」
「変わるよ。シキなら変えてみせる。シキを信じて」
ユリアスは理沙子の額に触れるように右手をかざす、すると理沙子は安心したかのように泣きやみユリアスの方へ体を傾けた。
そして、静かな吐息が聞こえ始める。
シキは理沙子をゆっくりと寝かすユリアスを見ながら、ゆっくりと瞳を閉じる。シキの体から、右目のアイスグリーンと同じ光が輝き出す。
そして、輝く手を理沙子へ向けてかざした。
理沙子の体はシキの輝きを受け、少しずつ自らも輝き出す。理沙子の体を被う緑の輝きは一瞬目を覆うような輝きになる。
シキの髪は風を受けるようになびき、その間から純白の翼が見え隠れしていた。
そして、一段の輝きを増している左右の瞳を細める。
「今度、瞳を開いたとき、世界が変わっていることでしょう・・・きっと」
ユリアスもゆっくりと微笑んだ。

 

-epilogue-

-scene6-

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