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アレクは腕を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
そして、腕を振り上げたままのアリスをゆっくりと抱きしめた。
「戻って来たんだね・・・アリス」
「以前のメモリは全てデリートしたはずですが・・・」
アレク博士はジッと二人を見つめていた。
「まだ、戻ラナイ・・・戻ル事ハ出来ナイ。あなたの様にはナレナイ」
アリスは表情を変える事なく涙を流す。
そして、アレクの腕からそっと離れると手の付け根から出る刃の一本を折り、止める間も無く自らの胸へ突き刺した。
「・・・アリス?・・・」
アリスはゆっくりと傾き床へ崩れるように倒れていった。
そして、その胸からはオレンジ色のオイルが止まることなく流れだし床を染めていった。
アレクはその姿を呆然と見つめていたが、博士にすがるように近づいた。
「博士・・・博士、お願いです。彼女を・・・アリスを助けて下さい」
アレクは倒れたまま再び起き上がることのないアリスを抱き上げた。
「アリスを助けて下さい」
しかし、博士はアレクの縋るような瞳に冷たく視線を注ぎ、ため息混じりに呟いた。
「役に立つと思い残しておきましたが、大した事は出来ませんでしたね・・・」
アレクは愕然と博士を見つめ、そして博士に詰め寄ろうとする。
しかし、アレクの前にユリアスが立ちはだかった。
「あなたの能力を費やし心をも宿した人間型機械は、あなたが創り出した命だよ。ただの機械ではない。
その自由に動きだした生命をあなたが制御する事は出来ない。あなたの為だけに動かす物であれば、それだけの能力で良かったはず。
心を宿す必要は無いでしょう?それを何故?」
ユリアスの言葉を聞いてククッと声を立てて笑う。
「あなたと同じ様なことを言われたのは二度目ですよ。「心を持つ生命体を創造し檻に閉じこめるな」とね。
あなた達を同じように創造出来る能力を持ち、彼は自ら愛する物を創造し、それを連れて逃げ出した」
博士は手に持っていた眼鏡をかけた。
「私はあなた方に逢うのは今回が初めてでは無いのですよ。逃げ出した彼の能力が諦めきれず追い続けていた。
その前にあなた方は姿を現した。逃げ出した彼らの姿も魅力的でしたが、あなた方のその力も魅力的でした」
ユリアスの脳裏に少しずつ以前のビジョンが浮かび上がる。
イギリス、ロンドンでの哀しい出来事を---------------------。
緑の瞳と黄金に輝く髪を持つ兄弟を。
「ナイト」という若者を。
そして、「エンジェル」という少女の名前を。
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