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「・・・ま・・さか・・・」
「そして、何よりも魅力的だったのは耳に白い翼を持ったときの不思議な能力です」
ユリアスは驚きのあまり、博士から一歩一歩後ずさる。
シキはユリアスを支えるように後ろから両肩に手を置いた。
博士は嬉しそうに笑みを浮かべ話を続ける。
「あなた方の情報はどれも薄い膜が張られているように確実な物がありませんでした。
まるで時代の波に紛れるように曖昧に表や裏へ現れ、その残り香を追っているだけでした。
逃げ出したアレクの居場所があなた方だと知ったときは神に感謝しましたよ。しかし、私の今の能力ではあなた方を束縛する力はありません」
博士はアリスを抱くアレクに近づいた。
「取引をしましょう。私は彼女・・・アリスを助け、アレクと共に自由にする。あなた方はここへ残る。どうですか?」
「NOと言ったら?」
ユリアスの挑戦的な目つきに博士は冷ややかに答える。
「あなた方は疑似生命体の存在に疑問を抱いています。それは自ら一度も人間型機械を創造、ましてや再生していない事になる。
しかも、心を持つ疑似生命体になると再生は困難なはず。あなた方は自らの力でアリスの命を戻す事が出来ますか?」
ユリアスは背後に立つシキを見つめうなずいた。
シキは何かを察したようにぐったりしたままのアリスを、アレクからそっと譲り受ける。
「僕たちは疑似生命体が創造出来ないわけじゃない。あの血のように流れるオイルを。動く事で作られる体温のような発熱温度を。
オイルを体中へ送る鼓動のようなモーター音を知っています。だから、その機能が朽ち果てたとき同じ生命を失ったようで直視する事が出来なかった。
切り捨てる事が出来なかったんだ。だから、僕たちは疑似生命体を創造する事はしない。・・・・答えは「NO」だ」
博士は一瞬哀しい表情を見せたが、不敵な笑みを浮かべた。
「あなた達にはここへ来た時から選択肢は無いのですよ。19号、21号彼らを止めなさい。多少傷つけてもかまわない」
19号、21号はユリアス達にめが襲いかかった。
両手首からは銀色の鋭い両刃の剣が突き出している。
しかし、その瞬間、ユリアスの前にシキが入り込み、19号、21号めがけて左手から衝撃波を放った。
衝撃波は19号達を壁まで飛ばし、壁についたまま、そこから一歩も体を動かすことが出来なくなっていた。
シキは体を動かそうと喘いでいる19号達を横目で見ながら、その奥にいたアレク博士に近づいた。
「あなたはこの地球上では必要な人間です。しかし、私達の様な人間を知る必要は無い」
博士にそう呟くシキの体から、シキの左目と同じ色をしたマリンブルーの光があふれ出す。
博士は驚き、シキから逃げるように後ずさる。
「私達の力の一部を見せてあげますよ」
シキは後ずさる博士の額を右手で押さえた。
「私達の真実の姿で・・・」
シキの周りが一段と輝きを増す。
そのマリンブルーの光の中で、シキの髪が風に揺れるように空へ舞い上がる。
揺れる髪の間から純白の翼が見え隠れした。
「・・・あなた達は・・・・」
シキは一段と輝く青と緑の瞳を細めた。
「さようなら。アレク・ジル・ライティング博士」
シキの右手にマリンブルーの光が宿った。
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