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歪むイチハの体に影が入り込む。
そして、イチハの体を通り抜ける。
イチハの背中から現れた塊は沢村に向かって体当たりした。
「うわっ!!」
沢村は黒い塊の体当たりを受けて勢いよく宙に飛ばされた。
それと同時に壁にぶつかる大きな音が辺りに響く。
「先生!」
イチハが心配そうに見つめる中、沢村はゆっくりと体を起こす。
そして、壁に打ちつけた右肩を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。
「いててて」
心配そうに走り寄る日下部たちが沢村を見つめる。
「先生・・・血が」
その言葉に沢村は押さえていた右肩を見つめる。
白いワイシャツには赤い血が滲み、少しずつ大きさを広げていく。
「あ、ほんとだ」
赤く広がった血は腕を伝い指の先からポタリポタリと廊下へ落ちる。
その血を見つめ、日下部は呟いた。
「先生は医務室へ向かって下さい。僕たちはあの影を追います」
「え? 僕も」
日下部は沢村の言葉を遮るように言葉を続ける。
「あの影は先生を見た瞬間、一直線に先生に向かって行きました。多分、今でも先生を捜して
います。学生室までは少し距離がありますし、先生の怪我の具合も心配ですし。・・・医務室
までお送り出来ないのは残念ですが・・・」
日下部はにっこりと微笑む。
「医務室は学生室と同じぐらい安全な場所です」
「・・・でも」
「まぁ、あれは俺たちがなんとか躾るから、先生は迎えに行くまで大人しく待っていて下さい」
清瀬は黒い塊が走り去っていった廊下の先を見つめながら呟く。
清瀬が見つめる暗闇に続く廊下の先には闇に紛れる事のない影が赤い瞳でこちらをじっと
伺っている。
「・・・来る」
夕凪の言葉にイチハは四人の前に立ちふさがる。
「今度は止めてみせるよ。先生は今のうちに医務室へ」
沢村は血の流れ続ける右肩を押さえる。
ポタリ、ポタリ、と血が廊下に流れ落ちた。
「分かった。医務室へ行って止血してくる。止血するまでは大人しく待つよ。でも、あんまり
遅かったらみんなを捜すからね」
その沢村の言葉に四人は安心したように微笑んだ。
「すぐに躾てやるさ」
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