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医務室は渡り廊下を渡ったすぐの所にあった。
先ほどまで残っていた微かな太陽の残り香も今は消え、闇が世界を覆い隠そうとしていた。
沢村は外から差し込む微かな明かりを頼りに医務室の扉をゆっくりと開けた。
「お邪魔しまぁ〜す。 ・・・って誰もいないか」
沢村は小さく呟き、そしてゆっくりと医務室の中へ入る。
消毒液の香りが微かに鼻を刺激した。
「・・・・包帯って・・・どこだろう・・・」
「包帯よりも先に消毒だろ」
突然の言葉と同時に辺りが明るくなる。
沢村は明るさに目が眩みながら声の主を捜した。
「・・・誰?」
「・・・誰って・・・。俺の聖域に入り込んで失礼な事を言う・・・沢村由樹先生」
沢村はようやく慣れてきた光の中に白衣を着た男性を見つける。
「・・・白倉・・・先生」
「沢村先生、こっちで肩見せな」
「・・・え? でも、どうしてこんな時間に?」
「薬屋と打ち合わせしてたんだよ。あいつ、こんな時間じゃねぇと体が空かないっつうから
・・・俺も一応客のはずだよな。弓木」
そう良いながら白倉は奥のカーテンを見つめる。
カーテンに隠れた場所からは仄かに光が漏れており、その光の中に影がゆらりと動いた。
「弓木、さっきの分に消毒液も追加してくれ」
「・・・了解」
カーテンが揺れ、奥から弓木と呼ばれた男性が姿を現した。
高級そうなグレイのスーツにアルミのアタッシュケースを持ち、眼鏡をかけた男性はスーツ
の内ポケットからカードケースを取り出し、名刺を沢村へ渡す。
「白輝清<ハクキセイ>製薬の弓木隆峰です。治療中申し訳ないのですが・・・。初めまして、
沢村由樹先生」
「・・・初めまして、弓木さん」
銀縁の眼鏡の奥の瞳が優しく微笑む。
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