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それから数日後
辺りがオレンジ色に染まる頃、日暮は一人、資料棟へ向かって歩いていた。
学生会室からは階段を下り、資料棟へ続くまっすぐに伸びた廊下を歩いていく。
「日暮会長」
誰もが帰路に着いたはずの時間に落ち着いた男子学生の声。
その声に日暮はにっこりと微笑む。
「あら、学生達の下校時間はとっくに過ぎているわよ。日下部くん」
「・・・僕の名前をご存じなんですね」
そう言いながら日下部は日暮に近づく。
「入学してから、まだ数日だと言うのに、あなたの事は二学年の中でも噂になっているわよ」
「それを言うなら、会長。あなたも。会長と会話をしたなんて誰かに知られたら大事ですね」
日下部は優しく微笑む。
二人はお互いの行く先を確認する事もなく、資料棟へ足を向けた。
清陽学院高等学校の資料棟は地下一階、地上三階の建物で建物のほぼ中心に他の階へ続く階段が
ある。
二人は資料棟の階段を二階へと上り、沢山並んだ本棚の奥へと向かった。
古本屋にいる様な埃の匂いが辺りを微かに包み、本棚にある本も奥へ進むにつれ古さを
増していく。
日暮と日下部はある本棚の前に立ち止まる。
そして、日暮は時計を見つめた。
時計の針は6時30分の数秒前を指している。
「・・・時間ね」
その言葉と同時に二人の目の前の本棚から眩しいほどの閃光が辺りを包む。
そして、その光を吸収するかのように、光は形を変え、次第に人の形を形成していった。
光は青年の姿へと形を変える。
透けるような白い肌をした青年が現れた。
青年は焦点が合っていないかのように遠くの虚空を見つめている。
「僕たちは彼には見えていないようだ」
その日下部の言葉に日暮はゆっくりと頷く。
そして、優しく青年の肩に触れた。
その瞬間、虚空を見つめていた視線が二人を捕らえた。
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