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「・・・・僕・・・は・・? ここは・・・どこ?」
青年は途切れ途切れに小さな声で呟く。
そして、青年の目の前にいた日暮に黒い瞳を向けた。
「ここは清陽学院高等学校です。私は学生会会長、日暮渚」
日暮はにっこりと微笑んだ。
「・・・学・・・校・・・?」
青年は視線を少しだけ落とす。
そして、何かを思い出したように、視線を上げた。
「・・・あぁ、たしか本を・・・本を返しに。・・・でも・・・その本・・・何の本・・・
・・・かな・・・」
その言葉に日暮は沢山並ぶ本の中から一冊の本を取り出し、青年に差し出した。
古びた本は色あせ、表紙も印刷された文字を確認する事も出来ない。
しかし、青年は嬉しそうに手に取る。
「あぁ、この本だ・・・そう、この本。・・・返さないと、もう、随分借りてしまっていた
・・・から・・・」
青年の輪郭がレンズを通したようにブレる。
その姿を見ていた日暮は優しく微笑みを浮かべる。
「この本はちゃんと返還されています。安心してください」
日暮は再び優しく青年の肩に触れた。
そして、ゆっくりと、はっきりとした口調で言葉を続けた。
「安心して逝きなさい」
その言葉に青年はすぅっと瞳を閉じる。
そして体から光が溢れ出す。
光は次第に体全体を包み、青年の体は輪郭を失っていく。
「さようなら」
日暮がそう呟いたのが合図の様に光は欠片となり空へ散っていった。
光が消えた後には日暮が青年に手渡した古ぼけた本が一冊残されていた。
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