□ scene8 □


イチハは誰にも気付かれる事がなく、何年もの長い間学生会室へ佇んでいた。
時々、学生会室に霊が現れる噂が流れたが、イチハの存在に気付く学生は誰もいなかった。

イチハは退屈そうに窓の外を見つめる。
グラウンドには沢山の学生達。
楽しそうに歓声を上げている。

グラウンドの周りには沢山の桜が満開を迎え、辺りをピンク色に染めていた。

「・・・今年も春が来た・・・」

イチハはため息混じりにゆっくりと呟く。

その瞬間、学生会室の扉がゆっくりと開き、男子学生が姿を現した。
学生はゆっくりと中へ入り、学生会室を見渡す。

学生が十数人座る事が出来る大きな丸いテーブル。
学生会資料に学校の歴史が書かれている本が沢山並ぶ本棚。
会長だけが座る事が出来る学生会長席。

そして、退屈そうに佇むイチハ。

視線はイチハを一瞬捕らえるようにみえたが、何もなかったように通り過ぎる。
学生は会長席にゆっくりと歩み寄り、小さく深呼吸をした。

「・・・・白倉陽一。今日から学生会会長だ」

白倉陽一と名乗った学生はにっこりと笑みを浮かべる。

「・・・何でかい声で独り言言ってるんだ。白倉」
「とりあえず、初めの挨拶は必要だろ? 弓木」

白倉は嬉しそうに学生会室の扉に佇む学生に答える。
弓木と呼ばれた学生は眼鏡の奥の瞳を細める。

「まぁ、な」

 

-scene9-

-scene7-

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