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長い廊下を抜けて階段を下りる。
校舎の間にある中庭に出る重い扉を清瀬が勢い良く開く。
そこには見事なまでも大きな桜の樹が1本佇み、樹を染める桜の花はチラリチラリと散っている。
日下部は桜の樹の下にいる人物に視線を注ぎながら、小さな声で呟いた。
「・・・あいつか」
その樹の下に長い黒髪の女子学生が静かに佇んでいる。
学生は満開に咲いている桜の花を今にも泣き出しそうな切ない表情で見つめていた。
「・・・あの学生がどうかしたのかい?」
沢村は不思議に女子学生を見つめながら、近くにいる夕凪へ訪ねる。
「そのうちに分かる」
夕凪がポツリと答えた。
女子学生は視線に気付き、此方へ視線を向けた。
次の瞬間、強い風が吹き上がり、沢山の桜の花びらが宙に舞い踊る。
その光景に清瀬は日下部に小さく呟いた。
「・・・なんだか、すっげぇ機嫌悪そうなんですけど」
日下部はゆっくりと女子学生に近づいた。
「ここで・・・待ち合わせ?」
女子学生は日下部の言葉に日下部を睨み付ける。
そして、左右に大きく頭を振りながら叫んだ。
「・・・・違う違う違う違う・・・あなたじゃないっ!」
ザワザワと桜の花が騒ぐ。
日下部の様子を見守っていた清瀬が、日下部に向かって走りながらイチハへ叫ぶ。
「イチハ、ヤバそうだぞっ!」
「うんっ」
イチハは宙に浮かび、清瀬と日下部の元へ飛んでいく。
「先生はここを動かないで」
夕凪もそう呟きながら、日下部達の方へ走り出した。
「え? ちょっと、夕凪くんっ?!」
次の瞬間、再び強い風が吹き上がる。
強い風が桜の花びらと共に日下部に向かって襲いかかった。
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