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「くっ!」
激しい風に押され、日下部は苦しそうに顔をしかめる。
「雪哉っ!!」
日下部の前に言葉と共に夕凪が立ちふさがる。
そして、左手を前に伸ばした。
夕凪の左手の前に突然透明な壁の様なものが現れる。
その透明な壁に阻まれて、風は3人に届く事は無い。
3人に後ろには両手を広げ何かに耐えているイチハの姿も見える。
桜の花びらが吹雪の様に舞い踊る中、長い黒髪の女子学生は今にも泣き出しそうに呟く。
「待っている、、のに・・・待っているのに。なぜ来てくれないの?」
女子学生は両手で顔を覆う。
「待っているのに待っているのに待っているのに待っているのに・・・」
「ナカ・・タ・・ニ・・・セン・・パ・・・・イ」
女子学生は両手で顔を覆ったまま、空気に溶けるように消えていった。
女子学生が消えると同時に、風は何も無かったかのように止まり、中庭には静寂が訪れる。
桜の花びらはチラリチラリと舞い降り、辺りは舞い散った桜の花びらで桜色に染まっていた。
静寂が訪れた中庭で清瀬が小さく呟く。
「・・・逃げられた」
「いや、消えただけだ」
散っていく桜を見つめながら、日下部は呟いた。
「ここから彼女は動くことが出来ない」
沢村は目の前に起きている光景が理解できず、ただただ見つめていた。
「・・・なんだよ・・・これ」
日下部は制服に付いた桜の花びらを払いながら、沢村へ近づく。
そして、にっこりと微笑んだ。
「ご理解頂けました?」
「・・・・・っ、り、理解出来るわけないじゃないかっ」
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