□ scene3 □


「先生、見せて」
「え? 何?」
「腕だよ。さっき腕を押させていたでしょ?」
「あぁ、大丈夫。引っかかれただけだから」

その沢村の言葉を無視する様に、イチハは沢村の腕を強引に掴む。
掴んだイチハの手は氷の様に冷たい。

「・・・血が滲んでいるよ。一応消毒をしておくね」

沢村の腕には細い3本の線が浮かび上がり、所々に血が滲んでいる。
イチハはフワリと浮かび、部屋の中の戸棚から救急箱を取り出し、その中から消毒液を取りだした。
そして、沢村の所へ戻り、消毒液を腕に塗り始める。
その姿を見つめながら、沢村は不思議そうに呟いた。

「・・・幽霊って物を動かしたり触ったりする事が出来ないと思っていたよ」

その言葉にイチハは少し寂しげな笑みを浮かべながら応える。
「・・・僕は特別なんだ」
少し寂しげなイチハの笑みに沢村は何も答える事が出来なかった。
そして、空気を紛らわせるかの様に学生会室をゆっくりと見渡す。
すると、もう一人の副会長、清瀬聖がいない事に気付く。
「あれ?・・・清瀬くんは?」

「彼は、サッカー部へ親善試合の応援ですよ」

夕凪が窓から見える大きなグラウンドに目を向けている。
そこには、サッカーをしている生徒達が見えた。
その中にサッカーボールを器用に操る清瀬の姿が見える。
グラウンドの周りには女子生徒が沢山集まり、声援をあげている。
その光景を横目に見ながら、沢村は室内にいる3人を見つめた。

「そういえば・・・君たちはどうして残っていたの?」
「ちょっとした噂を聞いて」
「その噂は本当だったみたいだね」

「・・・噂?」

日下部はその言葉に生徒会長席に座り、ゆっくりと頬杖を付いた。
「・・・サッカーボールがひとりでに動き出す。体育館に何かが見える」
日下部は沢村に向かって優しく笑みを浮かべた。
そして、話を続ける。
「調査を行おうと計画を立てていたのですが、イチハが突然叫び、消えた。
 イチハを呼ぶことが出来るのは、僕たち3人以外は先生だけ。
 今日は、沢村先生は校内の見回りだって聞いていたから」

「・・・・もしかして、こうなる事を期待してた?」

沢村は静かにゆっくりと呟く。
その言葉に日下部、夕凪、そしてイチハまでがニッコリと微笑んだ。

 

-scene4-

-scene2-

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