|
神矢達はシスターに案内され、教会の奥にある部屋に通された。
そこはベットが一つ置かれているだけの小さな部屋だったが、部屋には白い枠の
大きな窓があり、そこからは白いベンチと青い海が見える。
「・・・さっきの場所だ」
ユキは窓に近づき、窓を開けた。
フワリとユキの黒髪が揺れる。
海からの風が潮の香りを運んできた。
「あの場所は美奈子さんもお気に入りの場所でね。体調の良い日にはよくあの場所から
海を見ていました。
エドワードさんとも良くあの場所で楽しそうに話をしていたのよ。もちろん、貴方とも」
優しく微笑みながら呟くシスターの言葉にユキは先ほどの光景を脳裏に思い浮かべていた。
白いベンチに座り、海を見つめている女性。
その隣にはエドワードが座り、女性と同じように海を見つめている。
ユキは忘れていた何かを思い出しそうな不思議な感覚に襲われた。
「・・・俺は」
ベンチに見える二人は見つめ合い、優しく微笑む。
その二人の間には小さな子供。
「・・・どうして」
二人の間に座る子供は女性に嬉しそう抱きついた。
女性も嬉しそうに微笑み、子供の白い髪を優しく撫でる。
そして、口ずさむ優しい歌
それは潮風に乗ってユキの耳元へ届く。
「・・・忘れていたんだろう」
神矢はシスターと話をしていたが、窓から見える白いベンチを見つめ続けているユキを
不思議そうに見つめた。
「・・・ユキ?」
神矢はユキに近づき心配そうにユキを見つめた。
ユキは神矢の方へゆっくりと体を預けた。
「神矢」
「・・・ん?」
「母親・・・美奈子はいつもあのベンチで俺を抱きしめてくれた」
二人の視線の先には優しい潮風に揺れる草花と白いベンチ
ユキは眩しそうに見つめる。
「歌を・・・沢山歌ってくれたんだ・・・あの歌も」
「あの歌・・・?」
「・・・Jewelry of a miracle」
------------------カシャッ
その時、シャッターを切る音が微かに聞こえた。
|